これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。
高齢者の方の依頼で、戦前、戦中に知り合った人を捜されている場合、やっと捜し当てても、その相手が既に死亡されていることがあります。
そんな時は、通常ご遺族の住所とかお寺と戒名とかを報告します。
しかし、何十年も再会を心待ちにされていた依頼人 に対してその事実を報告するのは辛いものです。
「思いもよらない悲報でした。今はまだぼう然とし ておりますが、気持ちが落ちつけばお寺の方へお参りに行きたいと思って います」といったような手紙がきたりし て、私も本当に残念 な思いをします。
それにも増して、 現在三十歳代、四十 歳代の相手を捜していて、その人が死亡していると分かったときの依頼人は、更にショックが大きい のです。
依頼人にとってみれば、相手が生きているということは当然の前提であって、 その上で「幸せに暮 らしているのかが知りたい」「できれば再会したい」ということなのですから。
四十二歳のその男性の場合も報告書を作成しながら私は言葉も出ない思いをしました。
<続>
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