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調査依頼は人生そのもの(2)| 秘密のあっ子ちゃん(244)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

私はこの六年余りにざっと二千五百件の調査をこなしてきました。 当然、その中には多種多様の依頼があります。戦争中に生死も知れず生き別れになってしまった恋人を探してほしいという依頼から、三回デートしたけれどぷっつり連絡が入らなくなった彼女にせめてもう一度だけ会いたいという依頼まで、それは本当に様々なのです。
最近、私はつくづくこう思うのです。依頼人の想いに、「重い」「軽い」はないと。
先程例としてあげた前者のケースの依頼人の思い入れは、本当に重い。生き別れた恋人を五十年も想い続けてこられたのですから。
しかし、後者の依頼が 「軽い」とは言えないのです。
客観的に見れば、彼は明らかに「フラれて」います。しかし、本人は一生懸命なのです。「たとえ、もう一度会えたとしてもダメかもしれない」と分りつつも、なおかつもう一度会って話し合わない限り、彼自身が次のステップを踏めないのです。心の整理をするために、彼は必死でもがき苦闘していました。
だからこそ、彼の思い入れは、やはり「重い」と私は考えるのです。

<続>