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冤罪を晴らしたい(2) | 秘密のあっ子ちゃん(127)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 その根拠は、既に時効が成立し、彼自身の収監が間近に迫っている今、あえて調査費用を出してまで真犯人と思しき人物を探し出し、その人物に「名乗り出てほしい」と説得したいということにありました。それは明らかに、罪を誤魔化すためではなく、ただ自分の名誉を回復したいということだけを望んでいることの表れだと私は感じたのです。つまり、やはり彼はやってはいないことの証拠だと確信しました。
 「で、その人のことについてはいつまでご存知だったのですか?」
 私は具体的なことを聞き始めました。
 「ちょうど、事件があった頃までですわ。それ以降は地元でもぷっつり姿を見せなくなってしまいましたんや。やっぱりヤバイと思ったんとちゃいまっか」
 後見人の叔父さんが口を挟んできました。
 「その人の自宅は今、どうなっているんですか?」 「自宅ちゅうのは、親が住んでましてな、この前、ワシが行ってきたんですわ。ワシの顔を見て、母親は知らん存ぜぬの一点ばりですわ」
 叔父さんはそう言いました。
 「ワシの顔見て、母親も知らんの一点ばりですわ」 後見人の叔父さんは真犯人と思しき人物の実家について、そう語りました。
 「それは、隠しているような感じでしたか?」
 そう尋ねた私に叔父さんは再び答えました。
 「いや、あれは知りまへんな。ワシに嘘ついたら後が恐いちゅうことは、あの母親やったらよう知ってるはずでっさかい」
「それでは、本人が立ち回りそうな所の心あたりはございます?」
 「それらしい所は、ウチの若い衆をつこて当たらしましてんけど、あきまへんな。連れの所も、ここ十年、全く顔を出してませんねん」 「今は歴とした堅気でっせ」と言っていた叔父さんですが、私はその返事を聞きながら、「組長だった昔のまんまやんか」と思ったりしていました。
 「それで、ラチがあきまへんから、先生とこへ相談にきたんですわ。何とか力になってやって下さいな。さっきも言うたように、首尾よういったら、悪いようにはしませんがな」
 「まだ言うか」と私は思いました。もちろん、律義な依頼人のためにも、この依頼は受けて、何としても結果を出そうとは思ってましたが…。
 ずっと話を聞いていて、依頼員は「白」であるという心証を持った私は、この依頼を受けようと思いました。しかし、真犯人と思うしき人物が立ち寄りそうな所は、「後見役」の叔父さんが既に手を回して調べ、事件が起こって依頼全く姿を現していないとのことでした。
 「マ、あとと言うたら、住之江くらいでっかな。アイツは競艇が好きやったさかい、まだ大阪にウロウロしていたら、絶対、住之江に行くと思いまっけどな」
 叔父さんはそう言いました。
 しかし、どのレースの火にやってくるかも分からない本人を大勢の人がやってくる住之江競艇の人込みの中で特定するのは不可能なことでした。しかも写真もありません。
 「とにかく、一からその人の足取りを追ってみましょうs。できるだけ、あなたが収監される今月末までにその人の居所を判明させるように頑張ってみます。
 私は二人に向かってそう言いました。
 こうして、私達はこの調査を開始したのです。
 しかし、その調査は難行し、杳(よう)として進みません。
 二週間が経った頃、依頼人の彼から電話が入ってきました。
 「お世話になっています。実は、僕、明日に収監されることになりました。」
彼の第一声はこうでした。「えっ?!明日ですか?」私は何と返答していいか分からず、言葉の次穂を失いました。
「それで、後のことは叔父に頼んでありますので、何か分かれば叔父の方に連絡してほしいんです」 「はい。分かりました。何とかあなたが収監される前にと思ってがんばっていたんですが、間に合わなくてすみません」
調査の結果が出るのが彼の収監に間に合わなかったことに何とも気づつなく、私はそう言いました。
「いえ、それはいいんです。ソイツの居所が分かったとしても、名乗り出てくれるように説得するのには時間がかかるでしょうから、どのみち僕は一度は入らないといけないと思っていましたから…」
彼はさばさばしたような口調で、そう答えました。 「そうですか。くれぐれもお体を大切に、がんばってくださいネ」
私はそう言うのが精一杯でした。

 彼が刑務所に入った後も、私達は調査を続行しました。時効が成立している今、真犯人と思しき人物に名乗り出てもらうように説得し、何としても名誉を回復したいという依頼人の想いを受けて、私達は何とか結果を出そうとがんばっていました。
 調査は難航していましたが、それでも三週間が経ってた頃、やっと糸口を見い出すことができました。その人物が、今どの辺りに住んでいるのかという情報を得たのです。
 私達は早速、その近辺の聞き込みに入りました。その人物は女性と二人で暮らしており、特徴から言っても本人に間違いなさそうでした。しかし、写真がないため、それ以上の確認は不可能でした。
 私はすぐに、依頼人の後見役である叔父さんさんにその旨を伝えました。
 「その人間の写真を撮ってもらう訳にはいきまへんか。ワシが写真を見たら、本人かどうか判断つきまっさかい」
 叔父さんはそう言ってきました。
 「その人物の写真を撮ってもらう訳にはいきまへんか?」
 依頼人の後見役の叔父さんはそう言いました。
 「それが可能ですけど、そうなると、張り込み料が別に必要となってきますけど…。ですから、どなたか、その真犯人と思われる人をご存知の方が一度見に行かれるのがご負担のない方法だと思いますけど…」私は答えました。
 「金のことはどうでもよろしいねん。心配しはらんでも、何ぼでも払いますがな」
 私は「そんな意味で言ってるのと違うのに」と思いながら聞いていると、叔父さんはこう続けました。
 「この前、ワシ、検査にひっかかりましてな、明日からちょっと1週間程入院しなあきまへんねん。どっちにしても、退院したら、もう一回連絡を入れさしてもらいまっさ」
 それから十日が経ち、2週間が経ちました。叔父さんからは何の連絡も入りませんでした。私は「あれだけ急いでいたのに、どうするつもりなんだろ」と思っていました。
 ひと月近くが経ってた頃、私は気になって叔父さんに連絡を入れてみました。 
 「ああ、あれネ、この前は張り込んでもろて、本人の写真を撮ってもらいたいと言っとりましたけど、もうよろしいわ」
 叔父さんは事もなげに、そう言いました。
 「そうですか。前にお話ししましたように、私も本人さんをご存じの方が確認されるのが一番いいと思いますよ」
 「マァ、マ、その辺のことはこっちで何とかしまっさかい」
 叔父さんのこの反応で、私は既に本人であることを確認できたんだなと察しました。
 「では、この件はここまででよろしい訳ですね?」 私は念のためにそう聞きました。
 「ええ、ええ。えらいお手数をかけましたなぁ」
 「それでは、きっちりした報告書と精算分のご請求書をお送りさせていただきますので、よろしくお願いします」
 そう言う私に、叔父さんは「へえ、へえ」と言って、そそくさと電話を切りました。
 報告書と精算分の請求書を送った後も、「後見人」の叔父さんからはナシのツブテでした。
 「やっぱりな。『後のお礼はちゃんとしまっさかい』なんて言って、そんな人に限って正規の料金さえ払いが悪いや」私は改めて思ったものです。もちろん、「お礼」なんていうのを当てにしてはいませんでしたし、依頼人の心情に打たれて引き受けたこの依頼、真犯人と思しき人物の居所を突き止めたスタッフのがんばりに報いる正当な労働対価さえいただければそれでいいのです。
 報告書を郵送してからひと月経ってもこんな状態でしたので、私は叔父さんに電話を入れました。
 「初恋の人探します社ですが…」私が名乗ると、叔父さんは「あっ!ああ…」と具合悪そうな返答でした。私が「そろそろ料金の精算をしてほしいのですが」申し出ると、叔父さんは「あっちとも相談せなあきませんしな」と言うのです。
 「あっちとは、どなたのことですか?」私が尋ねます。
 「ああ、アレの母親ですわ」
 「そうですか。では、よろしくお願いします」
 そう言って、私は一旦、電話を切りました。
 「アレの母親に相談しなあきませんから」
 「後見人」と言っていた叔父さんは料金の精算についてそう言いました。 「依頼の時には、まるで自分が全面的に面倒を見ているみたいなことを言っていて、やっぱり話が大きいわ」そう思った私でしたが、それでも黙って連絡を待っていました。
 それから二週間後、依頼人のお母さんから電話が入りました。
 「えらいお世話になりましたそうで…。昨日初めて、弟の嫁から息子のことではそちらさんにお手数をおかけしたことを聞きました。弟が『全部、ワシに任しとけ』と言うもんですから、すっかり安心してましたんですけど、そちらさんにご迷惑かけたんと違いますやろか?」
 お母さんは随分と恐縮されていました。
 「いえいえ。で、息子さんはお元気ですか?『真犯人』の方は目処がついたんでしょうか?」
 「ええ、息子の方は何とかがんばっておるみたいですけど。例の『真犯人』の方は、今、弟が話しているみたいです。何とか名乗り出るのを承諾してくれればよろしいんですけど…」
 お母さんはしみじみそう言いました。
 叔父さんのタイプは、結局最後まで好きになれませんでしたが、私もお母さん同様、真犯人が名乗り出てくれる気になってくれるのを心から望んだものでした。
 
<終>

空き巣に狙われている!?(2) | 秘密のあっ子ちゃん(125)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 「で、そのTさんは何とおっしゃいました?」
 私はさらに彼女(24歳)に尋ねました。
 「『僕じゃない』って。第一、私はその人と初対面でしたもの。その人も『僕の名前を騙(かた)って、けしからんヤツだ』って言ってました。それで、何か困ったことがあったらいつでも連絡しておいでって、携帯の電話番号を教えてくれたんです」
 「腑に落ちない話ですねぇ」
「でしょう?変な話だと思いません?」
 彼女は何度も「変な話だ」と言いました。
 「その税理士さんはあなたの目の前でTさんに連絡を取られたんですか?」 「いえ、後で連絡を取っておくと言われたんで、私の電話番号を言っておいたんです。そしたら、Tさんの方から電話が入ってきて、『会おう』と言わはったんです」
 「ふーん。どうもクサイですねぇ。その“T”と名乗って来られた人が本当に“T”という名前なのかどうかも分かりませんしね」 「そうなんです。一番おかしいと思うのは、最初に税理事務所に電話した時には、私が名刺をもらった“Y”が電話に出たんですから」
 彼女は口ととがらせて、そう言いました。
 彼女の飛び飛びの話からも、ようやくこれまでの状況を把握することはできました。しかし、彼女が一体当社に何をしてほしいと思ってやってきたのかは、話の流れからでは全く分かりませんでした。 「で、ご依頼の内容とは何でしょうか?」
 私は聞きました。ところが逆に、「どうしたらいいんでしょうか?」と、質問をされてしまいました。
 「それはあなたがどうされたいのかによります。その税理士さんと“Tさん”という人がおかしいということでしたら、“Tさん”が本当にTという人物なのか確認する必要があるでしょうし、二度と空き巣に入られるのが嫌だからということでしたら、防犯面を考えないとダメですし、盗聴が気になるということでしたら、盗聴の有無を確認すべきでしょう」 私は細かく説明しました。 
 「うーん……。全部です」彼女はそう答えました。
 私は“T”の人物確認と盗聴の有無の確認は当社でできるが、防犯面は警備会社かセキリティ専門の所に依頼された方がいいと答えました。すると、彼女はこう言ったのです。
「ボディガードのようなことはやってもらえないのでしょうか? 」
 たっての望みとあればしない訳ではありませんが、ボディガードというのは元来セキュリティ専門の会社の仕事であって、調査会社の仕事ではありません。しかも、料金がかなり高額になるため、治安のよい日本では少ない仕事なのです。 その辺りのことを説明すると、彼女自身、今ほとんど予算がないと言っていたにもかかわらず、少し不満そうでした。彼女は映画の影響なのか、現実と少し違うイメージを描いていたようです。私は「ウチにはケビン・コスナーみたいな“ボディーガード”はいませんよ」と言いたくなるのを押さえるのに苦労したものです。 
 「ボディーガードをつけたい」、「防犯カメラも設置したい」、「盗聴の有無の確認もしたい」、「“T”なる人物が何者かを調べたい」と、いろいろ希望のある彼女でしたが、何しろほとんど予算のない中で、今後の方策を考えなければなりません。
 で、結局、私の知り合いのセキュリティ会社に防犯カメラの見積もりを取り、盗聴の有無の確認と“T”なる人物の確認の内、一番料金の安いものを選ぶということになりました。
 私はすぐに防犯カメラの見積もりを請求しました。その見積もりがまだ来ないうちに、彼女から電話が入りました。
 「考えたんですけど、やっぱり私が会った“T”という人が本当に“T”なのか、すぐに調べてもらえません? 」
 彼女の口調は随分急いでいるようで、私達は早速“T”なる人物の確認作業に入りました。
 二日後、その調査も半ばにさしかかった頃、再び彼女から電話が入りました。 「どうしても気持ち悪いんで、やっぱり盗聴されているかどうかも至急に調べてほしいんです」
 「それでは」ということで、盗聴の有無の確認に出向く日時を「週末にも」と決めたのです。
 彼女の自宅へ出向くという前日、請求していた防犯カメラの見積もりがやっと届きました。
 その金額をを彼女に連絡しようとした矢先、三たび彼女から電話が入りました。 その話を聞いた時、私は目が点になりそうになったのです。
 「“T”なる人物が本当にTであるかを確認してほしい」、「盗聴の有無も確認してほしい」と矢継早に依頼してくる彼女の要望に添って作業を進めていた私は、三度目の彼女の電話では目が点になりそうになりました。
 「ちょうど今、ご連絡しようと思っていたところなんです。防犯カメラの見積もりが上がってきました。“T”の確認については順次進めています」。電話口に出た私は、早速こう言いました。
 「そうですか…」。彼女は浮かない返答でした。「明日、盗聴の確認でウチへ来てもらうことになってますよね? それ、ちょっと中止してもらいたいんですけど」
 「それは構いませんが、何か新たな事態が起こったのですか?」
 「ええ、それが全財産を盗られたんです」
 彼女の返答に、私は驚きました。
 「また空巣に入られたんですか?」
 「いえ、今回はそうじゃなくて、友達が、台湾の友達を居候させていると言ってたでしょ、その子に全財産を預けていたんですけど、彼女が引ったくりに会ったんです」
 「今、ウチに居候させている台湾の友達に、私、全財産を預けていたんですけれど、その子が引ったくりに会って盗まれてしまったんです」
 彼女の身の上には次々と災難が起こるので、私は驚いてしまいました。それにも増して、何故全財産をその台湾の“友人”に預けていたのかが不思議でした。
 「部屋に置いていたら、また空巣に入られると思い、預けていたんです」
 私の疑問に彼女はそう答えました。
 「で、引ったくりって、どんな状況だったんですか?」
 「彼女の言うには、デパートでやられたって。すぐに届けたら、トイレから彼女のバックとパスポートだけは出てきたらしいんですけど…」
 「バックとパスポートは出てきたんですか? 現金の他に彼女に預けていたものはありますか? 」
 「あと、カードとか…。それも全部盗られたんです」 「それって、ちょっと変ですよ。彼女のパスポートは盗られてないんですよね?」
 「それって、ちょっと変ですよ」。私は彼女の話を聞いて、ある一つの確信を持ちました。
 「そのお友達の人柄やあなたとの親密度がどれくらいなのか分かりませんので、一概に断定することはできませんが、彼女を疑ってみる必要はあるんじゃないですか? 彼女の狂言だという可能性は十分考えられますよ。彼女のパスポートだけが出てきているのも変です。外国から来ている人はパスポートだけは絶対に手放しませんしね。それに、これまでの空巣の件も、合鍵を持っている彼女だと考えれば、警察の言うように外から侵入した形跡がなくてもやすやすと盗めれるでしょう」
 「そうですねぇ…、そうですよね。そう言えば、3回目の空巣に入られた時、試しに私、店に出る前にわざと10万円をバラ散いておいたんです。そしたら、帰ってきたらきれいになかったですから…」
 彼女も心当たりがあり、友人が怪しいと思ったようです。しかし、確たる証拠がある訳でもなく、“友人”でもあるので、訴えるかどうかは逡巡していました。 「どちらにしても、もう私の部屋からは出ていってもらいます」彼女は言いました。
 こうして、彼女の「不思議な体験」は一応の“決着”をみたのでした。

<終>

空き巣に狙われている!?(1) | 秘密のあっ子ちゃん(124)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。
 
 つい最近、「狙われている」と助けを求めて飛び込んで来られた女姓がいました。
 彼女はキタのある高級クラブに勤める二十四歳のホステスさんでした。顔立ちは非常に美しく、その上、男性から見れば「守ってやらなければ」と思わせるような可愛いさがあり、常に自分の手元に置いて独占したくなるような雰囲気を持った女性でした。
 聞くと、彼女はこの二ケ月の間に三度も空巣に入られてたと言うのです。
 一度はセカンドバックの中の現金十万円程度とキャッシュカード類全て、二度目は毛皮やブランド物のバックなど、計四百五十万円相当を盗まれたとのことでした。もちろん警察には届け、現場検証はしてもらったと言います。
 「で、警察の方はどうおっしゃってました?」
 私が尋ねると、彼女はこう答えました。
 「ベランダからといった、外からの侵入の形跡はないと言われました。私はたぶん合鍵かなにかを使って、玄関のドアから入ったんだと思うんです」
 「警察の方の捜査は進んでいるようですか?」
 私は彼女に尋ねました。 「いえ、それが動いてくれている様子がないんです。現場検証の時、指紋が出ないかも見てくれたんですが、それも出なくて、その後は何の連絡もありません」
 「そうですか。で、今日は当社に何をしてほしいということでお越しになられたんですか?」
 私は話の筋がよく見えず、そう聞きました。
 「実はネ、この空巣は誰がやったのかはだいたい検討がついているんです」  彼女はこんな話を始めました。
 「店のお客さんで、以前からすごい口説かれてた人がいて、私が相手にしないもんだから、たぶんその人が嫌がらせてやっているんじゃないかと思うんです」 「ふ~ん。で、その人がやったという確証はあるんですか?」
 「私、盗聴もされているんです」
 彼女は私の質問には直接答えず、次の話を始めました。
 「友達と電話で話したすぐ後にその人から電話がかかってきて、友達との会話の内容を知っていたんです。盗聴されているとしか考えられないでしょう?」
 「友達と電話で話していたすぐその後に、その人から電話がかかってきて、友達との会話の内容を知っていたんです。盗聴されているとしか考えられないでしょう?」
 依頼人は言いました。
 「その可能性も否定できませんが、それだけでは断定できませんねぇ。その友人に話された内容をお店でされたことはないですか?」 私は尋ねました。
 「……、してないと思いますけど……。それに、その前後、マンションの前に変な車がよく止まっていたんです」
 「変な車って、ナンバーは控えられましたか?」
 「いえ、控えてません」 「そうですか。ナンバーが分れば、その車は誰の所有者かを割り出せますので、今回の件と関係があるかどうか判定できるんですがねぇ……」
 「それよりも『盗聴』って、どんな風にされるものなんですか?」
 こういうことに関して素人である者としては至極当然なことですが、彼女は自分が一体何をされているのか分らないことに相当な不安を感じているのでした。
 私は考えられる「盗聴」のパターンを依頼人に説明しました。
 「一つは目覚し時計や受話器などの室内の器具や家具にセットするものと、もう一つは電話回線にセットするものとがあります。これは電波がさほど遠くへ飛ばないので、隣室や近くに車を待機させておいて聞く必要があります。ですから、先程おっしゃられた『変な車』というのは可能性がない訳ではありません。しかし、電話回線に盗聴器をセットするのは法律違反ですし、見つかれば“逮捕”ということになります。電柱につけておくのは目立ちますし、NTTも常に注意していますから、遊び半分の嫌がらせでするにはリスクが大きすぎますねぇ」
 「部屋の中にセットするのは簡単なんですか?」
 彼女はまだ不安が取れないようでした。
 「盗聴器をセットしたものをあなたにプレゼントするか、直接部屋に侵入してセットするかでしょうねぇ」 「私、絶対、部屋の中にセットされているように思いますわ。それを発見するということはできるんですか?」
 「ええ。それは十分可能ですが、あなたの部屋は侵入しやすいような構造なんですか?」
 依頼人が不安にかられる気持ちは重々理解できるのですが、私にはどうも彼女が先走っているように思え、そう尋ねました。
 「いいえ、ベランダから入るという手はありますけど、十階建ての七階ですから、『簡単に』という訳にはいかないと思います。あとはドアから入るしかありません」
「合鍵を誰かに渡しておられますか?」
 再度、私は尋ねました。 「ええ。今、台湾の友人が居候してますから、彼女にだけは渡してあります。空き巣に入られてからは何回もキーを換えて、今は電子ロックにしています。これは私の承認がない限り、合鍵は作れないそうです」 「で、その台湾の友人という方は信頼のおける人なんですか?」
 「ええ。それは大丈夫です。空き巣に入られたことも一緒に心配してくれてますし……」
 私は彼女のその“友人”という人の人柄や彼女との親密度をよく知りませんので、彼女が「大丈夫」と言えば、それ以上何も言うことはできませんでした。
 彼女の話はまだまだ続きます。
 「私、そのお客さんと話をつけようと思って、税理士さんに電話したんです」 「ちょっと待って下さい。“そのお客さん”というのは、盗聴したり空巣に入ったりした犯人だとあなたが思っている人ですね? で、その人に連絡を取るのに、何故税理士さんに電話するんですか?」
 彼女の話は注意深く聞かないとよく分からないところがあります。
 「その税理士さんがその人をお店に連れて来た人です。私は税理士さんの名刺をもらっているので、税理士さんの電話番号を知っていますけど、その人の連絡先は知らないからです」
 「話がややこしいので、“その人”のお名前は何とおっしゃいます?」
 「高橋です」
 「でも、高橋さんが仮に犯人であっても、直接話したところで認める訳はないでしょう?」
 「だけど、他にどうしていいのか分からなかったから……」
 「で、高橋さんとは連絡が取れたんですか?」
 「それがね、」彼女は身を乗り出して言いました。 「事務所に訪ねていくと、全く違う人が『私がここの税理士です』って、出て来られたんんです」
 またまた、彼女の話は訳が分からなくなってきました。
「ちょっと待って下さい。あなたが名刺をいただいた税理士さんの事務所に訪ねていくと、別の方が出て来られたんですね?」
 彼女の話は筋がよく分からない所があって、私は再度念を押して尋ねました。
 「そうなんです。名刺をもらったのは三十代の人で、名刺には『吉田誠税理事務所、吉田誠』って、書いてあったんです。それで、そこに電話したら、その人が出られたんですが、事務所へ行くと、六十代の人が『私が吉田です』って、出てきたんです」
 「親子か何かじゃないんですか?」
 私はてっきり彼女の勘違いだと思いました。
 「いえ、違います!」
 彼女は断言しました。
 「私、『吉田誠先生ですか?』って、確認したんですよ。そしたら、オジイ、あ!オジイなんて言ったらあかんね。その人は『私が吉田誠です』って言うんです。それに『ウチでは税理士は私一人です』って言うんです」
 「ふーん。変な話ですねぇ」
「そうでしょう? それにもっと変な話があるんですよ」
 彼女の“変な話”はこれで終わらなかったのです。
 その税理士さんに彼女は、「私が名刺をもらったのはもっと若い方でした」と、そのいきさつを説明したのでした。 「で、その税理士さんは何とおっしゃいました?」 私は尋ねました。
 「『私の名前を騙(かた)るなんて、けしからんヤツだ』って。それで、Tに会ったら、これがまた全然別の人だったんです」
 「ちょっと待って下さい。どこでTさんと連絡が取れたんですか?」
 彼女の話はまた飛ぶので、私はそう質問せざるを得ませんでした。
 「いえ、私が名刺をもらったYという人から紹介されたTに会いたいんだと言うと、その税理士さんは『私の友人にもTがいる。あなたが会いたいのはその人間かもしれないので、私が連絡を取ってやろう』と言ってくれたんです。翌日、連絡が入ったんで会いに行くと、全然違う人だったんです。私の言うTは三十代ですけど、その人は五十代後半の人でした」
 彼女の言う“もっと変な話”とはこういうことでした。でも、私は“T”と名乗る別人が現れたということより、その税理士の友人にも“T”がいたということの方が偶然にしてもできすぎていると思いました。

<続>

書店員さんとお話したい(1) | 秘密のあっ子ちゃん(107)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 人は我が事になるとドキドキ、ハラハラして、どうも勇気が出ないものだということはこの仕事を通じて常々感じていることですが、今回の主人公ほどシャイで相手のことを気づかった人は少ないでしょう。
 彼は今年五十七才。ある大手企業の中間管理職です。なかなかの紳士で、企業戦士らしく私が直接お話をしている分にはテキパキと返答され、それほどシャイであるとは見えませんでした。ところが厄介なもので、何か感情が入るとそうはいかないもののようです。
 彼は読書家でした。ジャンルも仕事がらみのビジネス書から純文学・推理小説、それに趣味の一つである歴史の難しい専門書まで多岐に亘っていました。
 彼は余暇と通勤時間には必ず本を読むことにしています。ですから、一冊の本を読み上げるのに一日か二日しかかかりません。従って、次に読む本を探すために、毎日のように本屋に顔を出すことになります。
 行きつけの書店は会社の自社ビルがテナントとして貸し出している一階の大きな本屋さんでした。
 昨年の春、毎日通うその書店で目新しい女性が働き始めました。彼女は四十才過ぎ。笑顔がとても素敵な女性でした。
 行きつけの書店で、新しく勤め始めた四十才過ぎの女性。笑顔が素晴しく、とても愛想のいい、気持ちの良い人でした。
 彼は彼女を初めて見たその日から、その接客の仕方の見事さに感服しました。「こういう部下がいたら、商談もスムーズに進むだろうな…」と思ったりもしました。
 彼女の方も、毎日のように書店に顔を出す彼のことをすぐ覚えたようです。
 彼がいつものように、その日選んだ本を買うためにレジへ行くと、彼女がそこにいました。
 「よく本を読まれるんですねぇ」
「ええ、読書が一番の趣味ですから…」
 初めての会話はこうでした。
 それからというものは、自分で目当ての本が探し切れない時や、「こういう傾向の本を読みたいが、何かいい本はないか」というような本に関する様々な相談を彼女名指しでするようになりました。
 彼女は若いころ図書館書士をしていたらしく、本についてはかなりの知識を持っていました。
 彼は、本についての話を一度ゆっくりと彼女としてみたいと思いました。
 とは言っても、それを行動に移すことはできませんでした。本について二人であれこれ話すことは、得るべきものが多く有意義であろうし、とても楽しいことだろうと想いを馳せるのですが、何故かこと彼女のことになると、彼は「極めつけのシャイな人間」になってしまうのでした。
 またたく間に一年が過ぎました。
相変わらず彼は毎日のように書店に顔を出しています。彼女をデートに誘い出すことはできないでいました。
 そんな時、当社の存在を知ったのでした。
彼は私に言いました。
 「彼女は最初の時から変わりなく、いつも優しい笑顔で私に接してくれています。一度、喫茶店かどこかでお話をしたいと思うのですが、ただそれだけのことを伝えるにも、どうしても声をかけられないのです。自分には妻子がいるし、彼女の方にも当然家庭があるだろうし…。それを考えると、お茶に誘うことでさえ彼女に迷惑をかけてしまうのではないかと憚られるのです。そんな訳で、お誘いしてもいいかどうか、一度聞いてもらえないでしょうか?」

<続>

私の里子

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 彼女は、私の子供です。もちろん実の子ではなく、
就学支援をしている里子です。名前はヘニーローズ。
彼女が住んでいるのは、フィリピン・ネグロス島です。
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 私が里親になったのは、日刊工業新聞社が
サポートしてくれている異業種交流会、「浪漫の会」の
会長をしていた頃、講師に辻野ナオミさんをお迎え
したことがきっかけです。
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 辻野さんはフィリピーナで、ネグロス島出身。日本に
嫁いできて、現在、宝塚に住んでおられます。故郷の
ネグロスでは、貧しさのため教育が受けれない子が
多いことを嘆き、独力で島の子供たちの就学支援に
取り組んでこられました。
 NEHAは正式名称を「ネグロス教育里親運動」
といい、既に20年の実績があり、毎年1000人以上の子供たちの
教育支援を行なっています。
 里子の支援は小学生なら年間15,000円、
中学生なら23,000円、大学生なら63,000円です。
わずかこれだけで彼女たちは教育を受けることができ、
そのことによって人生を変えていくことができるのです。
 私の初めての里子は、アイネです。
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 小学3年生の時から支援し、今年短大を卒業して
現在は働いています。
 最初はたどたどしい文字でしたが、短大ともなると
文字も見違えるぐらい達筆になりました。
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 NEHAでは、年に1度里子訪問のツアーが
あるのですが、仕事や父・弟の看病や受験や
ロースクールでの授業やらで、結局一度も
行けずじまいです。
 アイネにはまだ1度も会えていませんが、
きっと素敵な女性に成長したことでしょう。
ロースクールを修了したら、今度こそ里子訪問を
したいと思っています。その時には必ず大人に
なったアイネと、今、勉強と親の手伝いを頑張っている
へニーローズに会いたいと思っています。
今日の茶阿
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ワア!やっとお外に出してもらえるのニャ。
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ゴロニャン
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ゴロニャン
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ああのびのび。
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む?不審者か?
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よし!見張りをするのニャ。ぼくは番犬ならぬ番ネコなのニャ!

梅にウグイス、梅にインコ?

反省!
佐藤あつ子?
「更新しなきゃ更新しなきゃ」と思いつつ、予習に復習にテスト勉強にと
時間をとられ、その合間に仕事をこなしていると、なかなか更新できませんでした。
反省!!
心を入れ替えて、頑張って更新していきます。


大阪城と梅
桜の花も好きだけど、それよりも梅の花が好きです。
入学前は年ごとに賀名生、月ヶ瀬、大阪城公園と周遊していたのですが、
ここしばらくはご無沙汰。
先日、思い立って久しぶりに大阪城公園に梅を見に行きました。
ここでよく梅の木を買います。
しだれ桜
今回買ったしだれ桜
梅
7年前に買った梅。
その年亡くなった父に闘病中のプレゼントとした梅とペア。思い出深い一品です。
今も奇麗に咲いてくれます。

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よく、「梅にうぐいす」といいますが、本当はメジロとのこと。
梅の花にはメジロがよく止まるそうです。
その日もメジロが止まっていましたが、ムム、おぬし、素早いな!
シャッターチャンスを逃してしまいました。
mukudori
梅にムクドリ
梅にヒヨドリ
梅にヒヨドリ
インコ
む?梅にセキセイインコ
オウム
は?梅にオウム
おっちゃん
飼い主のおっちゃんでした。
今日の茶阿
ちゃあ2
ボク、佐藤茶阿でしゅ。
ここがボクの定位置なのニャ。
茶亜1
ここからお部屋全体を見渡すのニャ。

ちゃあ3
お母さんは最近よくボクを撮っていましゅ。また撮られた。
おっと、コケそう。

絵手紙通信

「A・法学部出身」さんがおっしゃっているハガキとはこれ!
りんどう絵手紙通信
↑2007年10月 No.8
コスモス絵手紙
↑2006年9月  No.2
今、私は法科大学院で授業を受けているか、自宅やキャレルに
こもって自習しているかで、みなさんに不義理ばかりをしているので、
この絵手紙通信は「生きているぞ!」という意味で、これまでご縁を
いただいた方にお送りしています。
 しばらく更新をさぼっているので、ブログをご覧いただいている方にも、
「生きているぞ!」という意味でご覧いただきます。

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