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一人娘の家出(3)| 秘密のあっ子ちゃん(237)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

進路を巡って両親と対立し、家出した一人娘(19才)。私達は前後の状況から考えて、彼女には支援者がいると確信しました。
彼女は家を出た途端、たちまちその日寝る場所にも困ったはずです。所持金が少なければ、何日もホテルに泊ることはできません。
ましてや、未成年ではアパートを借りることもできず、加えて住民票提出やら保証人の印やらの手続きがなおさらうるさい。住み込みで働いているかもしれないとも考えましたが、お母さんの話では、ひとりっ子で甘えて育った上に、性格的に絶対に『住み込み』などできる子ではないということでした。
ですから、支援者は必ずいると・・・。
家出の場合、こうしたケースはよくあることでした。兄弟姉妹が知っていたり、伯母さんが密かに援助していたり、あるいは友人が助けていたりするのです。知らないのは親ばかりということになります。
しかし、彼女の場合、ひとりっ子で頼れる兄弟姉妹はいません。彼女がなついていたお祖母さんも、母親と一緒に心配したり嘆いたり怒ったりで、彼女はお祖母さんにさえも連絡を入れていないようです。ましてや、お祖母さん以上に彼女が心を許す親せきはいないということでした。
では、”支援者”とは誰なのか?
彼女の支援者は友人の誰かであるに違いないと踏んだのでした。彼女はその友達の家に居候しているはずです。
しかも、アパートなどに一人暮しをしている友達ならなおさら好都合です。私達は彼女の友人関係への聞き込みを行うことにしました。それも、中学・高校の友人は卒業してからはあまり往き来がないというお母さんの話から、漫画家志望仲間に絞り込んだのでした。彼女が今一番心を許し親しくしているのが、そうした志を同じくする漫画家の卵達だったからに他ありません。
彼らは彼女が通う予備校近くのゲームセンター」 によく集まっていました。彼女もしばしばそのゲームセンターに顔を出していたようです。
私達は、早速一人住いの漫画仲間を当たりました。しかし、どの子も 『一月か二月ごろから、 彼女の姿を見ていない』 という答えが返ってくるばかりです。それは、ちょうど彼女が家を出た時期です。
そこで今度は、自宅通学の漫画仲間にも聞き込みに入りました。最初対応に出てくれたその家の母親も心配してくれはしたのですが、やはり、 皆、半年以上彼女とは会っていないということでした。

<続>

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