これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。
彼は、今年三十才になります。既に所帯を持っていて、子供は三才の男の子がいます。幼少のころから律義な性格で、人の面倒見も良い、優しい人物でした。
二年前、学業を終えて六年程勤めた会社で、彼の同僚が大きなミスをしてしまいました。事の成り行きで、彼はその同僚をかばう形となり、二人揃って退職するはめになってしまったのです。
その後、彼は別の会社に一時転職したのですが、共に退めたその同僚に誘われてマリンスポーツ専門の店を共同で始めました。出資金はもちろん折半で、彼は自分の貯金だけでは足りないと言うので、その一部を彼の父親が援助しました。
今回の依頼人となる彼の父は、それで順調に店を経営し、生活にも支障なく送っているものと安心していたのです。
それが、昨年六月の突然の家出です。驚きました。
幼い子を抱えている上に身重の嫁に申し訳が立たず、父親は必死で探し始めました。
まず、友人関係や商売の関係の人に心当たりがないかを聞いてみたのです。すると、考えてもいなかった事実がボロボロと出てきたのでした。そこで初めて耳にしたことは、父にとっては驚愕するものでした。
「商売?うーん。あんまりうまくいってなかったんと違うかな?なにしろ、共同経営者の方が金使いは荒いわ、取引先に不義理はするわで、評判は良くなかったからネェ・・・」
「なんでも、相棒の借金の保証人になってあげてたみたいよ。サラ金の方も、ぎょうさんあんのと違うかな?人が好すぎるんやねえ・・・」
「女がおったみたいでっせ。前の会社にいた娘ですわ。その娘と一緒なんと違うかな?」
依頼人はすぐさま、息子が以前勤務していた会社の元同僚、つまり自分も出資してやったマリンショップの共同経営者を探しました。すると、彼は息子が家出する二ヶ月も前に行方不明となっていたのでした。
次に、「愛人」と言われた女性の家を訪ねてみました。彼女の家庭は既に父が死亡し、母一人娘一人でした。応対に出てくれたのは、彼女のお母さんでした。
<続>

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