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ムッとくる依頼も・・・(1) | 秘密のあっ子ちゃん(132)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

私達は、[気がかりな人を探してほしい]という依頼人の思いを受けて、その要望をかなえるべく常に全力で調査を尽くしているのですが、依頼人といえどもいろんな方がいらっしゃるもので、時にはムッとくるようなこともあります。
例えば、つい最近もこんなことがありました。
その依頼人は六十六歳の男性でした。二人の娘さんがいましたが、十七年前に離婚したため、以後は一切会えずにいました。
「娘も二十七歳と二十五歳という年になり、もう世間のことが分かる年頃ですから、私が離婚した理由をちゃんと知ってもらいたいんです」彼はそう言いました。
「で、現在の居所はご存知ないのですね?」電話を受けていたスタッフが尋ねます。
「分らないということではありません。たぶん十七年前に住んでいた所にそのままいると思うんです」
「住所が分かっておいででしたら、ご自身で手紙をお出しになるという方法が費用面で一番負担がなくて済みますよ」スタッフはそう提案しました。
ところが、彼は「ええ…」と煮え切らない返事をするのです。
「いや、それはちょっと都合が悪いんです。私の名前で手紙を出すと、先妻が開封する恐れがあるんです。それに娘達も年頃ですから、既に家を出ているかもしれませんし…」
「それでしたら、やはりお嬢さんが今どこにいらっしゃるのかを調査するしかありませんねぇ」
スタッフはそう答えました。すると、今度はこんな質問が返ってきたのです。
「ええ。でも、仮に娘がまだ嫁いでなくて家にいるとしたら、先妻の手前、どういう風にしたら離婚した理由を伝えられますかねぇ?」
「その場合は、こちらから女性名でお嬢さんのお手紙を出させていただくのは可能ですよ」
「そういうこともしてくれるんですか?」
彼の声は急に明るくなりました。
「ええ、当社ではコンタクトの代行ということもやっておりますので」スタッフはそう説明しました。
その要望を踏まえて、結局、彼の依頼とは、とにもかくにも娘さんが今どこに住んでいるのかを調査し、その後、当社の女性スタッフの名前で彼の手紙を娘さんに送るということになりました。
人探しの調査の結果、娘さんは結婚をし独立しているという彼が危惧していたようなことではなく、まだ未婚で、先妻と共に十七年前に住んでいた住所そのままの所におられました。
早速、スタッフは依頼人に娘さんの現在の居所が明らかになったことを伝えました。

<続>

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