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悪徳興信所の「化調」とは…(2)| 秘密のあっ子ちゃん(181)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 「今回の調査について、 どこからの依頼かはだいたいご見当はおつきになっておられますよね?」彼らはそう言います。
 「ええ、だいたいは・・・」
 代表者がそう答えると、彼らは心の中で「しめた!」と思っているはずです。そして、何という企業を想像しているのか、その具体名を逆に聞いてくる場合もあります。
 こうなると、彼らはそそくさと、「電話ではなんですので、一度お伺いしたいと思います。本日は事務所の方にいらっしゃいますか?」と言ってきます。訪問日も決して時間を置きません。
 そして、いよいよ彼らの登場です。彼らは代表者 に細かく質問し、工場を見学したり倉庫の在庫状況などを見たりして、丁寧な調査を行います。
 ひと通りの調査が済んだ後、代表者との雑談の中 で、彼らは何気なくこれも何かのご縁ですので、こ の際、当社の会員になっておいて下さい」と言うのです。
 代表者は全体の流れの中で、今回の調査の依頼主と思っている企業との今後の関係のためにも、「この興信所とつきあっておいた方が有利だ」という心理状況になって、会員登録を承諾したり、調査チケットを購入したりするのです。彼らの本来の目的はここなのです。もし、代表者が迷ったり渋ったりすれば、彼らは依頼企業といかに懇意であるかを臭わせたり、「報告書を書く私も主観が入る場合もありますので、思わず筆が滑ることもないとは言えませんし・・・」などという、真面目に業務を行っている調査業者から見ればとんでもない発言をして強く勧誘するのです。
 長年中小企業を経営されている方なら、こんな経験をお持ちの方が少なくないと思います。
 高度経済成長期には、こうした手口でボロ儲けした「化調」興信所がかなりいたようです。しかし、現在は中小企業の代表者自身がその手口を熟知されてきたことによって、昔のようにそう簡単にその手は食わなくなってこられたこと、また調査業協会の自浄努力などによって、「化調」興信所は随分と姿を消してきました。
 ところが、残念ながら根絶された訳ではありませ ん。その手口を知らない新設の企業を狙って動いている所が未だに存在している事実は悲しい限りです。
 この「化調」の質の悪さは「本調」と区別がつきに くいという点です。「本調」でも調査先に直
接出向いて調査を行う場合は多々あります。むしろ、信用調査においては、この「直調」は欠かせないものなのです。そして、その場合の多くは代表者と面談します。逆に、経営者が「直調」を拒否すれば、「来られたらまずいことでもあるのか?」と痛くもない腹を探られたりする結果を招かないとも限りません。
 それでは、どう対処すればいいのか?
 それについては、明日のこのコーナーでお話しすることにいたしましょう。
 「化調」は「本調」と区別がつきにくいという点から、それを見破るにはなかなか難しい面があります。
 しかし、だからと言って手をこまねいてる訳にもいきません。 少なくとも、問い合わせしてきた「興信所」側が、 依頼主が分っているかどうかを執拗に尋ねてくるのは要注意です。
 しかし、万が一、それが「本調」なら調査拒否をすれば不利になりかねませんので、一、二時間の時間を裂かれるのは覚悟して、調査はきっちり受けておかれた方が無難でしょう。
 その上で、相手が会員登録やチケット購入を勧めてきた場合、必要でなければきっぱり断ればいいのです。
 まともな興信所であれ ば、それで報告書の内容が 変わることは断じてありません。
 但し、きっちりした興信所でも信用調査専門の興信所の多くは会員制やチケット制を取ってますので、以後調査を出す必要性がある企業は、それをご利用いただければいいかと思います・
 また、調査業の協会にその興信所が加盟しているかどうか、あるいはどういう業者であるかをお問い合わせされるのも一手です。

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