これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。
手紙で依頼してきた彼女は、先生へ寄せる心情をこう述べていました。
「大変素晴らしい先生で、他の患者さんからも信頼のある先生でした。先生にはずいぶんご迷惑をおかけしたと思いますが、嫌な顔ひとつ せず、本当によくして下さいました」
「できることな ら、もう一度お会いしてお礼申し上げたいのです。私のことを覚えていらっしゃるか、四年前と変わらずにいらっしゃるのか。それがとても心配ですが、今のままでは心の整理がつきません」
二週間後、私たちは先生の現在の住所を探し当て、彼女に報告しました。先生は山口県下の病院に勤務していました。
それから三カ月後、彼女からの手紙が、私たちの元へ再び届きました。
「先生に手紙を書きました。そして、しばらくしてお電話を頂きました。四年間の空白は少しございますが 時折、電話をいただいてお話ししております」
そして、こう結んでいました。
「今度、休みの日に先生に久しぶりに会い に行くことになりました。これからも、このままよいお付き合いを続けていけると思っております」
その手紙を読んで、私には彼女の晴ればれとした顔が見えるようでした。
<終>
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