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茶阿くんの損害賠償は勝ち取れるか?

私には同居人がいます。
とはいっても、ネコです。
茶阿1

↑茶阿です。ヨロシュク。
名前は茶阿(ちゃあ)です。
なんだ、今回のブログはペット自慢かと思われる向きもあると思いますが、ところがどっこい、これが法律の話なのです。
茶阿は2年前に我が家に来ました。生後40日の時です。
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↑体重は450グラムでした。
茶阿は我が家の3代目の同居人です。その前はタミーといって、15年生きてくれました。ペルシャのメスです。
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↑タミーは人間の感情に敏感で、怒っている時は心配して見にきてくれ、悲しんでいる時は手を舐めて慰めにきてくれました。
好みもあるでしょうが、ネコを飼った方はご存知のように、子猫を得たければオスよりもメスの方が飼いやすいのです。というのも、オスだと発情期にはウォンウォン(犬じゃない!)吠えるし、そこら中におしっこをかけてマーキングするしで、結構大変。
で、タミーが他界して悲嘆にくれていた5年の空白を経て私もやっと立ち直ったので、また「女の子」が欲しいと物色してたのです。
そんな時、あるペットショーで兄妹ネコにアイフル状態になりました。
どちらかというとオスだと言われたほうが顔立ちは良く、とっても可愛く捨て難かったのですが、「オスは飼いにくい」と致し方なくメスを選びました。チンチラ・ゴールドという種類で、歴とした血統書もありました。値段も同時に生まれたのに、オスよりもメスのほうが高いのです。それが茶阿でした。
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↑とはいってもそれなりにカワユイ!
その後、茶阿はすくすくと成長。
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↑メジロを狙っているのだニャン!
成長するごとに動きが激しく、どうもタミーの時と様子が違う。
「茶阿ちゃんってお転婆ね!」と文句を言いつつ可愛がっていました。
茶阿6

↑イナバウアーができるのだニャン。
8ヶ月が経った頃、初めての入浴。嫌がる茶阿を組み伏せ、ロン毛をドライヤーで乾かしていると、お腹の下あたりに黒い点々。「ん?これって、タ○タ○じゃないの?」
女の子だと思ってた「茶阿ちゃん」は、なんと「茶阿くん」だったのです。
茶阿7

↑ボクを呼んだ?
すぐに血統書を確認。血統書にも「雌」とはっきり書いてある。
早速クレームの電話。しかし、その対応たるや、
「ああ、そうでしたか。それでしたら、こちらの手数料持ちで血統書を書き直します」
そんなの当り前じゃん!で、それだけかい?
さらに、ひとしきり文句。それに対して店長曰く、「オーナーにも確認しましたが、販売時に割引きもしてますので、これ以上はなんともしようがありません」
8ヶ月も経ってすでに情が移っているだけに、「では、メスと取り替えましょう」てなことを言われるのもつらいので、いつになく黙って引き下がってしまった私。
茶阿8

↑見捨てないでね
それでも、どうもひっかかる。消費者センターに聞いてみた。
「血統書を変えるのは当然として、何らかの補償は十分主張できますよ」
とのアドバイス。最後に、「ちなみに何という業者でしょうか?よろしければ教えてください」と係員。私が業者の名前を述べると、絶句。そしてこう言った。「その業者だと、今回の話はちょっと無理かも…」
え?何それ?なんでそんなに急に話が変わるの?
聞くと、どうも札付きの業者らしい。奥歯に挟まったようなものの言い方をされるので、その辺の聞き込みは手馴れたもの。真相を聞き出した。輸入禁止の動物を輸入して、それを訴えられてもどこ吹く風のような業者とのこと。それとなく、色んなところで探ってみれば、評判はすこぶる芳しくない。
どう処理しようかと思っているうちに、法科大学院の受験が始まり、私もそれどころじゃなくなった。その間に茶阿くんはすくすくと成長。
茶阿9

↑お昼寝は気持ちいいニャン
法科大学院入学前のある日、知り合いの弁護士と飲んでいる時に茶阿の話が出た。
「そりゃぁ、絶対勝つよ。訴えてみれば?小額訴訟というのもあるし、本人訴訟っていう手もあるよ」との助言を得る。
「しかし、待てよ。時効は5年とのこと、札付き業者が相手ならもう少し勉強してからにするか」
それから半年。
この案件も意識しながら民法の財産法をしっかり学んだわけだけども、消費者センターや弁護士が言うように、まさしく勝つのは間違いない。つまり、民法第95条「動機の錯誤」による契約無効か、415条「債務の本旨に従った履行がなされない」債務不履行による損害賠償請求、541条「履行遅滞」による解除、570条瑕疵担保責任による契約解除と損害賠償請求、といった権利が生じる(なぜその権利が生じるのか、民法の条文はどうなっているのかということを書こうかと思ったけれども、それじゃあまるでテストの答案になっちゃって、せっかくテストから解放されたのに、長々書くのも頭が痛いし、読まれる皆さんも頭が痛いだろうから、しょうりゃく!ショウリャク!省略するのだ!)。
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↑このままでえり巻きになっちゃう
ただ問題なのは、訴訟に勝利しても、「根性すわった」業者なら、判決が出ても損害賠償などに応じないだろうということが容易に想像できること。「ない袖は振れない」式にほったらかされたら判決がほとんど意味をなさない。
これまで依頼人からいろんな相談を受けて、私が法科大学院で法的専門知識を学ぼうと思った動機の一つは、まさしくこの部分。法律があっても、現実には本来のニーズや要望に対してかゆい所に手が届くような解決策がなかなかとれないことが多いということ。
さて、同居人茶阿くんの案件をどう料理するか。今の私の勉強レベルではまだまだ解決できないので、もう少し頑張って勉強してみます。
茶阿10

↑ボクがお母さんを守るのだニャン!