これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。
彼が当社に依頼してきた時は三十一才。二十七、八才のころに一年ほど交際した彼女を探してほしいというものでしたが、その時、 彼はひどく後悔していました。
というのは、こんな事情があったのです。
彼には、当時とても世話になっていた先輩夫婦がいました。
交際しているガールフレンドがいなかった彼は、ある日、その先輩夫婦の前で、ふと『僕もそろそろ“結婚”ということを考えていかなければと思っているんです』と漏らしたのでした。
彼のその言葉を聞いた先輩夫婦は、すぐさま奥さんの姪を紹介してくれまし
た。当然、結婚相手として真面目な交際を期待してのことです。彼女は実家がある九州の看護学校を出て、大阪の国立病院に勤務する『白衣の天使』でした。
人柄も優しく、美人とはいかないまでもとても愛らしい人でした。二人はごく自然に交際を始めたのですが、彼は先輩夫婦の意図とは裏腹に全くの『遊び』のつもりだったのです。
彼女とは一年程交際が続きましたが、次第に彼の本心が先輩夫婦にも彼女自身にも分かってきたようです。
彼女は看護婦としては優秀な人でしたが、彼の誠意のなさに随分と悩みました。
そして、ついにある夜に先輩夫婦に呼ばれた彼は、 二人の詰問にこう答えたのです。『彼女はいい人だけど、結婚する気はありませこん』と。
それを聞いて烈火の如く怒ったのは奥さんでした。
『あなたが結婚したいと言うから、大事な姪を紹介したのに、今さら何ていう
言い草なの!! あの子はとても傷ついているのよ!』
彼は奥さんから出入り禁止を言い渡されてしまったのでした。
<続>
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