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15歳の予感(4) | 秘密のあっこちゃん調査ファイル:

これは1994年に出版された、佐藤あつ子著「初恋の人、探します」(遊タイム出版)に収録されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。
応対に出た事務員らしき人に転勤先を聞いてみたが、「知らない」の一点張りで、とうとう教えてもらえなかった。
「どうしたんだろう」
 会えない時とはまた別の不安が頭をもたげてきていた。
「引っ越したばかりで、きっとまだ落ちついてないからよ」
 必死に自分で自分を納得させた。
 しかし一ケ月が過ぎ、半年になり、一年がたってもやはり十川からの連絡はなかった。
 疑念と葛藤が入り交じった日々だった。
 だまされた…?ううん、先生はそんなことする人じゃない。どうして連絡をくれないんだろう。電話一つくれれば済む話なのに。
 もしかしたらこのあやふやな関係に終止符を打つ意味で、先生から引導を渡されたのかもしれない。けどそれでも、何も言わずに去ってしまうなんて納得できない。ショックだった。
「私は先生にとってそれくらいの存在だったのか」
 そう思うと涙が次から次へとあふれてきた。
十川との連絡が途絶えてから四年が過ぎていた。
時間の流れはいやおうなくサチエの思い出を風化させていく。
 待ち合わせに使った病院前の喫茶店は経営者が変わったのだろうか、あのころとはまったく違うモダンな店内に改装されている。
 今ではさすがに十川のことを思い出して夜中に泣くようなことはなくなった。しかし先生のことをあきらめてしまったわけではなかった。
「自分の人生に一生かかわっていく人になる」
 十五歳の時に感じたあの不思議な直感を、心のどこかで信じていた。
 昭和天皇のご病気で自粛ムードが流れるその年の暮、母が買ってきた女性週刊誌を何げなく見ていたサチエは、そこに掲載されている記事に目をみはった。
 何度も何度もその記事を読み返し、そして手紙を書いた。
初恋の人探します社御中
 …タイミングとでも言いましょうか、母が買ってきた雑誌に目を通していて、貴社の記事が飛び込むように目に入ってきたのです。
 私にも、探していただきたい方がいます。
 県内の興信所か探偵社に依頼しようかと以前から考えていたのですが、どこの会社をどう信用してよいのやら、因っていたところでした。
 そこへ貴社の記事を見つけたのです。
 スタッフは女性の方ばかり、しかも心に残る方ばかりを探しておられるということでした。
 何度も何度も記事を読みました。そして、私の思いは募る一方でペンを取った次第です。
 …先生は大変素晴らしい方で、他の患者さんからも信頼されているお医者さんでした。
先生には随分ご迷惑をおかけしたことと思いますが、嫌な顔ひとつせず、本当によくして下さいました。
 お元気でいらっしゃるのか、今はどこの病院にいらしゃるのか、できることなら、もう一度お会いして、お礼とお詫びを申し上げたいのです。
 私のことを覚えておられるのか、四年前と変わらずあのままの方でいらっしやるのか、それがとても心配なのですが、今のままでは心の整理がつきません。
 …勇気がたくさんたくさんいりまして、深く深く考えました。少しでも前へ進むためにも決心いたしました。
 結果がどうあろうと、心の整理もつくと思います。
 何とぞよろしくお願いいたします。
                 山内サチエ
<続く>

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