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ナンパで知り合った二人(2)| 秘密のあっ子ちゃん(159)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。
ナンパ橋で知り合った依 頼人(20)と彼女(19)。二人は二ヶ月もたたないう ちに同棲を始めました。
彼女は昼は専門学校に通い、夜はバイトをしていま した。彼はフリーターで、 どちらかと言えば夜に仕事 をすることが多かったと言 います。そのため、同棲し ていてもなかなか二人でゆ っくりできる時間がありま せんでした。
そのうち、彼女は彼と一 緒にいる時間を作るために、学校へ出なくなってい きました。そんなことが半年も続く と、彼女の両親に学校へ行 ってないことがばれてしまいました。 両親は「どうなっている んだ」と、ある日突然、彼 女のアパートにやってきた のです。
二人が同棲していることを知って、彼女の父親は激 怒しました。彼に対しては怒りの言葉を発することはありませんでしたが、 その場で彼女を篠山の実家へつれ帰ってしまいました。
三日後、彼女から何の連 絡もないのを心配して、彼が彼女の実家に電話を入れ ると、既に番号は変えられ ていました。
それがひと月前の出来事 だったのです。

彼は彼女から実家の詳し い住所を聞いていませんで した。変更された電話番号 だけでは訪ねていきようもありません。それに、彼にはもう一つ心配事がありま した。
彼女のアパートへ両親が 乗り込んできた時、彼女の父は彼に対して罵倒するわ けでもなく、「娘がお世話 になりました」と丁寧な対応をしてくれてはいたものの、親に黙って暮らし始め たことに怒っていないはずはありません。彼が訪ねて 行ったとしても、「門前払 いされるのがオチだ」としか考えられませんでした。
彼は彼女のことが心配で たまりませんでした。実家に帰って両親にこっぴどくしかられ、一歩も外 へ出してもらえないのではないか?いや、実家にいれば自分が連絡を取 ってくるか もしれない と、どこか へ預けられ てしまっているかもしれない…。 彼女が連れ戻された時、二人は今後のことを打ち合 わせする間もありませんで した。彼女を引き止める余 裕さえ与えられなかったの です。
彼女と連絡が取れなくな ってひと月、あれこれ思い 悩んだ末、彼は当社にやってきました。
彼が彼女の所 在と状況の確認を依頼してきたのは、「せめて、もう一度きっちりと彼女と話し合いたい」と願ってのことでした。
一週間後、私達の調査の 結果、彼女の実家の住所と新しい電話番号が判明して きました。彼女は間違いなく実家にいました。しか し、やはり軟禁状態だった のです。
彼はすぐに報告書を受け 取りにやってきました。 彼は悩んでいました。
彼女が軟禁状態であれ ば、当然、彼が訪ねていっても会わせてもらえないのは明らかでした。当社のスタッフが何らか の方法で彼の伝言を彼女に 伝えることができても、彼 女の方から彼に連絡が取れるとは限りません。今まで 彼女から何の連絡も入らな いのは、おそらく電話できない状況なのだと考えられ ました。
私達は、何とか彼女と連 絡を取る方法はないものか と、彼にいろいろアドバイ スをしましたが、彼は結論 を出すことができませんでした。
結局、その日、彼は、 「今の話を基に、もう少しじっくり考えてみます」 言って帰っていったのでした。
それからまた半年がたち ました。彼から当社には何 の連絡も入りませんでした。
私は彼のことが少し気に かかっていましたが、連絡がないのはうまくいった証 なのだろうと思っていたのです。
しかし…。

<続>

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