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両親の墓はどこに・・・(1)| 秘密のあっ子ちゃん(197)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

聞くところによると、今でも寺や墓地には無縁仏がたくさんあり市町村によっては、その子孫を探しているところもあるということです。
そうした子孫の所在調査を行っている市町村管理の墓地では、調査してもその所在が分からない場合、墓碑に札をかけ、子孫たちが申し出てくるのを待っていると言います。
しかし、期限までに子孫が申し出てこない時は、整理の対象になるのだそうで す。
また、寺の方はというと連絡が取れなくなった檀家で、何十年もお参りに来られていない墓は、「無縁仏」として一つにまとめるのだということを、以前からよく耳にします。 逆に、先祖の墓を探しておられる子孫たちも大勢いらっしゃいます。
なおかつ、「気に掛かってはいるが、探す手だてが分からないので、そのままになっている」という人たちはそれ以上いらっしゃるとい うことなので す。
そこで今回は、間もなく除夜の鐘を聞きながら正月を迎え、先祖の供養を行うという新しい年を前に、 一年の締めくくりとして、『お墓』や『先祖』ということに関係したお話をしたいと思います。

当社には、人物ではなく「お墓を探してくれ」という依頼までたまに入って来ます。
その多くは、「お世話になった方だが、すでに死亡されたと聞いた。お墓参りがしたいので、そのお墓を探してほしい」というのがほとんどです。
ところがここ最近では、「先祖の墓を探してほしい」という身内の依頼も増えてきているのです。
こうしたケースで最初に受けたのは、三年前のことでした。
依頼人は六十七歳の男性で、「両親の墓がどこにあるのか分からない」ということでした。
私は先祖ならまだしも、両親の墓が分からないというのは、ちょっと奇異な感じがしました。しかし、話に聞くと、それは止むを得ないことだったのです。
依頼人の父親は香川県出身で、外務省に勤務していました。
結婚し、長男である依頼人が生まれたころ は、秘書官として東南アジアのある国の大使館に赴任していたそうです。
ところが、依頼人が五歳だった昭和五年、父親はマラリアにかかり、看病で付き添っていた 母も感染し、両親が相次いで亡くなったのだと言います。

<続>

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