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彼を16年思い続けて(1)| 秘密のあっ子ちゃん(200)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

今回のお話の主人公となる依頼人は二十八歳の独身女性です。
彼女には十六年間、心ひそかに思いを寄せ続けている人がいます。その彼は彼女より五歳年上で、初めて彼に出会ったのは、彼女が中学一年生の春のことでした。
彼女は高校、短大と続いている私立中学校に入学しました。
通学は毎日、電車を利用 します。いつも降りる駅のそばには、別の男子高校がありました。
入学間もない ころ、彼女はいつもの電車で一緒になるその男子高校のグループの一人に目を奪われます。
ちょっとおませだった彼女は、その彼に一目惚れしたので す。
それからというもの彼女は必ず同じ時間、同じ車両のドアから電車に乗り込み、彼らのグループにくっついて通学したのでした。そして、いつも耳をロバのようにそばだてて、彼らの話に聞き耳をたて、その名前や彼が高校三年生であることを知りました。
二カ月が過ぎたころ、『いつも同じ電車に乗っているかわいい中学生』と気付いてくれたのか。それとも単に電車が揺れて彼女がよろけたはずみなのか、彼が話しかけてきたのです。
それをきっかけに彼女は、彼らのグループと電車の中での会話に参加するようになりました。
彼女は毎朝の通学時間が最高の楽しみでした。おかげで彼女は、無遅刻、無欠席を通すことができた、と 言います。
彼の友人たちは、彼女が彼のことを好きだということに感づいていたとも。おそらく彼自身も気付いていたことでしょう。
そして、年も改まり、バレンタインデーの二月十四日がきました。
悩みに悩んだ彼女。それまでの彼女の人生で一番の勇気を出して彼にチョコレートを渡したのです。「好きです」というメッセージを添えて・・・。

<続>

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