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心のマドンナ(2) | 秘密のあっ子ちゃん(112)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 彼と彼女が育った地域は材木の集積地です。私達は彼女が嫁いだ先はその近辺だと当たりをつけ、「すわ!」とばかりに材木問屋を軒並みに聞き込みに入ったのです。
 ところが、これがまた彼女が嫁いだはずの材木問屋になかなかぶち当たることができなかったのです。 何軒当たっても、彼女が嫁いだはずの材木問屋に辿りつくことができず、私達は「本当に材木問屋に嫁いだのか?」とか「この辺りで間違いないのか?」などと疑心暗鬼にかられてきていました。
 と、ある一軒の問屋さんで、「ああ、それやったら、あそこのお嫁さんかもしれん。親父さんが脳溢血で倒れてからは跡を継ぐ者もなく、今はもう商売をやめておられるけどな」という情報が入ってきました。
 早速、教えてもらった住所に向います。
 私達がその家に着いた時、家の人は皆出ておられ、おじいさん一人が留守番をされていました。病気もかなり回復されたようで、それなりに動くことができるようになっておられたのですが、記憶の方がもう一つです。
 「さて?嫁の旧姓は何でしたかいなぁ?」
これでは埒があかず、ここまで来たついでとばかり、私達は腰を据えて彼女が帰ってくるのを待ちました。
 夕方、帰宅してきた彼女に、私達は「実は…」と説明します。途端に彼女の顔がパッと明るくなり、こう答えたのでした。
 「まぁ、○○君、私のこと、よう覚えてくれてやってんねぇ!」

<終>

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