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浮気調査は…(3) | 秘密のあっ子ちゃん(140)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

美容院の女性経営者(46)の依頼で、夫(48)の浮気現場を押さえるため、張り込みを開始した尾行班は、その彼がマンションから出てくるのをじっと待つ。

<午前七時三十分> 依頼人が事前の打ち合わせ通り、 近所の奥さんたちと温泉旅行へ出発。

<午前八時>調査先は動かず。

<午前九時>調査先まだ動かず。

<午前九時五十分>調査先がついに出てきた。背が高くひょろっとしていてちょっと神経質そうなおっちゃんだ。私たちは、この調査先をこれ以降、親しみ(?) を込めて”オッチャン”と呼んだ。オッチャンはミニバイクに乗り、駅前の方へ走る。

<午前十時五分>オッチャン、 駅前のパチンコ店へ入る。

さあ、それからが大変だった。 オッチャンは、延々とパチンコに熱中し始めたのです。正午を過ぎても三時を過ぎても、昼食も食べずに、ただパチンコだけをしている。七時を過ぎても、九時を過ぎても夕食もとらない。ただひたすらパチンコなのです。何しろ、駅前商店街の中にあるパチンコ店のこと。車を乗りつけてその中で張り込むこともできず、”立ち”で張り込むしかない。

元気のいい、わが尾行班とはいえ、”立ち”の張り込みが十時間以上ともなると、さすがにあごが上がり始めてきたのです。

 

降気調査を依頼してきた美容院経営の主婦との事前の打ち合わせでは、夫は妻の宿泊旅行の間に、浮気相手と密会する手はずでした。ところが、密会どころか朝の十時からすでに十時間以上も、ただひたすらパチンコに熱中している “オッチャン”(ご主人のこと)。

駅前商店街の中にあるパチンコ屋のこと、車を乗りつけてその中から張り込むわけにもいかない。”立ち”の張り込みがこれだけ長時間になると、いくら元気印のわが尾行班といえども疲労の色は隠せません。

食事やトイレは交代で行けるとしても、調査先がいつ動くかもわからないので、休憩さえ取れない。不幸なことに、わが若い衆は全員パチンコがヘタで、オッチャンのそばでパチンコを打っても間が持たない。

尾行班が「もううんざり」と思ってきたころ、店内はついに”蛍の光”が流れ出しました。オッチャンが動き出す。閉店するのだからイヤでも動かざるを得ませんが。尾行班もオッチャンの跡を追う。(ちなみにオッチャンの十二時間の成果はゼロだったようです)。パチンコ店を出たオッチャンは、ミニバイクはそのままに、今度は15メートルほど先の麻雀店に入りました。

その麻雀店に「例の女がいるのでは?」と、メンバーの一人が店内をのぞく。しかし、”女”の姿はなく、オッチャンは早くも麻雀に熱中し始めているではありませんか。

結局その日、彼は午前二時近くまで麻雀をして真っすぐ帰宅したのです。

翌日の日曜日、尾行班は午前八時から自宅前で張り込みを開始しました。前日の十九時間に及ぶ尾行で疲れは倍増していましたが「今度こそは」と気合を入れて張り込んだのです。

<午前十時十分> オッチャンが出てくる。十分睡眠をとったのか元気そうだ。昨日と同様、ミニバイクに乗り駅前へ走る。「またパチンコと違うやろな!」と不安に思いつつ跡をつける。

<十時二十五分> 駅前の喫茶店に入り朝食をとる。「待ち合わせか?」と、張り込みを続けるが女は現れない。

<十一時五分> 喫茶店を出たオッチャンは駅に入り、「動物園前」行きの電車に乗る。尾行班も車とバイクを乗り捨てて電車に乗りこむ。

<十一時五十分> オッチャン、日本橋で下車。地上に出て道頓堀を歩いていく。「これは、いよいよだ」と思ったのもつかの間、オッチャンは何と場外馬券売り場の人込みの中へ入っていくではないか!

その後、彼は、場外馬券売り場と道頓堀の喫茶店を何往復かし、午後四時半過ぎ、「真面目」に帰宅したのです。

初日の十九時間に及ぶパチンコと麻雀。二日目の場外馬券売り場での競馬への熱中ぶり。調査の結果、彼に「浮気」の事実は出てきませんでした。しかし、かけ事にのめり込んでいる事実は明らかになったのです。

 

夫の浮気調査を依頼してきた美容院の女経営者でしたが、二日間の張り込みの結果、その疑いは晴れました。「浮気の事実はなかったが、賭け事にのめり込んでいるようだ」

尾行報告書を手渡した時、この依頼人は随分意外な顔をしていました。それもそのはず。彼女は、夫の帰宅時間が遅いのも所帯費を入れないのも、全て浮気のせいだと思い込んでいたのですから。

その後一カ月ほどして、彼女から当社へお礼かたがた報告の電話が入りました。彼女は、ご主人を問い詰めるやらなだめるやらしてとうとう、「賭け事の負けが込んでサラ金にも手を出している」ことまで白状させたと言うのです。そして、よくよく話し合い、「賭け事はやめる」「二人で頑張って借金を返し、もう一度やり直す」という結末になったとか。彼女の声は依頼してきたときの悲痛な声ではなく、むしろ晴ればれとしていました。借金という尾ヒレがついてきたため「めでたし、めでたし」と言っていいものかどうかわかりませんが、少なくとも「離婚」という最悪の事態だけは避けられました。

そして、当社も初めて受けたこの浮気調査で、ずいぶんいろいろな勉強をさせてもらったのです。

<終>

 

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