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彼は46歳。21年前、交通事故で下半身マヒに…(2) | 秘密のあっこちゃん調査ファイル

これはH5.11/2~11/6に大阪新聞に掲載された記事を加筆修正したものです。
なお、登場人物はご本人の了承を得ております。

お互いの気持ちを確かめた2人は交際を続け、彼女は彼のプロポーズの言葉を待っていました。しかし、彼は彼女にプロポーズできませんでした。彼は言っています。「そのころの彼女は僕にとってはあまりにもまぶしくて、幸せにする自信がありませんでした」と。
リハビリセンターでの生活も2年が過ぎ、退院する日が近づいたある日、彼女は思い余って「付いて行きたい」と、彼に詰め寄ったそうです。「こんな自分なのに」と涙が出るくらい有難かった彼ですが、あえて「お前なんかと一緒に暮らす気はない!」と突き放しました。彼女は泣いて怒ったそうです。
退院して半年後、どうしてもその時の彼女の様子が気になって、彼はリハビリセンターを訪ねました。しかし、彼女は怒ったまま、ついに彼には会ってくれませんでした。


そして、それから18年。現在46歳の彼は、「もう一度彼女に会って謝りたい。その時の自分の本当の気持ちを伝えたい」と、探偵社で彼女の所在を探してほしいと当社に「思い出の人探し」の調査を依頼してきたのでした。
彼が分っている「手がかり」は、彼女の氏名と生年月日。そして、彼女が定時制高校の卒業で、島根県隠岐の島出身ということだけでした。
私達は早速、リハビリセンターに聞き込みに入りました。無論、リハビリセンターには彼女はもはやいるはずもなく、係の人に古い名簿を探してもらいましたが、18年も前の書類は既に破棄処分になっていました。次に、私達はその近辺の定時制高校を軒並み調べました。親切に仕事の手を止めて古い名簿を調べてくださった先生もいましたが、残念ながらその中には該当者はいません。しかも、多くは「プライバシーの問題がありますので、如何なる理由であっても個人のことについてはお話しできません」という冷たい回答が返ってくるだけだったのです。


やむなく、私達は隠岐の島の同姓を片っ端から当たっていきました。ところが、田舎のことゆえ、同姓があまりにも多い。へとへとになりながら調査を続け、根をあげそうになった時、ついに彼女の実家を探し当てました。
彼女は結婚し、既に2児の母になっていました。そして、今も看護婦を続けているということでした。
その内容を報告した時の彼の喜びぶりは、それはもう苦労した甲斐があったというものです。「これで、彼も彼女に謝れば胸のつかえも下りるだろう」と、私自身もホッとしました。
しかし、しばらくして再び彼から電話が入ったのです。
「この2ヶ月、何度も彼女に電話しようとしたのですが、どうしても勇気が出なくて…」


「僕は今さら彼女に対してどうこうという気持ちはありませんが、男の僕が突然電話してご主人に誤解されたら、彼女に迷惑がかかるし…。そんなことを考えていると、なかなか連絡ができなくて…。なんとか佐藤さんの方から連絡を取ってもらえませんか?」
そんなわけで、私が彼女に連絡を取ることになったのです。
彼女は、私が彼の名前を出した途端、「元気にされていますか? ずっと気になっていたんです!」と矢継ぎ早に彼についての質問をぶつけてきました。私が、彼の18年前の気持ちや現在の心情を伝えると、彼女は、「そうでしたか。あの頃は私も若かったので恨みもしましたが、その後、ずっと気がかりだったんです。彼から連絡を取りにくいようでしたら、今からすぐにでも私の方から電話します」と答えたのでした。
実は、これは三日前のお話です。その後どうなりましたか、私は彼の報告の電話を楽しみにしています。
<終>

Comments

  1. 山口さん より:

    初めまして。
    温かいお気持ちで起業された佐藤社長にも、
    今回の調査ファイルにも、
    人の絆や思いやる気持ちに、とても感動しました(ToT)

  2. 佐藤あつ子 より:

    コメント、有難うございます。
    これからも、ご依頼人様の身になって仕事を進めていきたいと思います。

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