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彼は46歳。21年前、交通事故で下半身マヒに…(1) | 秘密のあっこちゃん調査ファイル

これはH5.11/2~11/6に大阪新聞に掲載された記事を加筆修正したものです。
なお、登場人物はご本人の了承を得ております。

さて、いよいよ今回から、当社のメインである『思い出の人探し』のお話をしていきましょう。
一口に『思い出の人探し』と言っても、世代によって『探す』動機は全く異なります。今回は、中年の方のお話です。中年の方の探偵へのご依頼は圧倒的に男性からのものが多いのです。よく『男の方がロマンチストだ』と言われていますが、それはまさにその通 りだと思います。彼らの『探す』動機のほとんどは、『もう一度会いたい』ということではありません。『元気かどうか』『幸せかどうか』、それが気になるということなのです。
中年の女性はと言うと、これがまたおもしろい。『探す』より『探されたい』のです。同世代の私としてはかなり納得出来る感覚ではありますが…。ですから、男性からの依頼を受けて調査を行い、彼女達を探し当て、依頼人に代わって『彼女』にコンタクトを取った時、彼女達は非常に喜んでくれます。そりゃあ、そうだと思います。『自分の知らない所で、誰かが必死に自分のことを気にかけてくれていた』ということが、分かったのですから。『眠れる森の美女』の気分になったとしてもおかしくはありません。
今回お話するその『眠れる森の美女』は、現在42才の女性です。しかし、依頼人の男性にとって彼女は『眠れる森の美女』どころか、それはまるで『天使』だったのです。


彼は現在46才。横浜市在住で、ある小さな設計事務所の仕事を自宅勤務でしている人でした。実は彼は21年前に大きな交通 事故にあい、下半身マヒとなってしまいました。
昭和47年の正月、彼は赴任先の東京から、実家のある大阪へ戻ってきていました。正月3日、彼は友人に会うため、新御堂筋を北へ向かって走っていました。江坂あたりにさしかかった時、前方を走っていたバイクが隣の車線の車と接触し倒れたのです。接触した車は走り去ってしまいました。彼は自分の車を止め、倒れているバイクの若い男を抱き起こそうとしました。彼が覚えているのは、そこまでだそうです。バイクの男を助けようとしている時に、彼は後続の車にはねられたのです。


彼の意識が戻ったのは、その事故から10日もたってからのことだったと言います。その当時、彼は国立大学の建築学部を卒業し、大手ゼネコンに勤務しているエリートでした。家族や友人など周囲から将来を嘱望されていたばかりか、自らも明るい人生設計を描いていました。
しかし、その希望も、この事故で一瞬にして打ち砕かれてしまいました。事故から3週間後、彼は医者から『下半身は治る見込みはない』と言い渡されたのです。しかも、結婚を約束した恋人は彼の前から去っていきました。彼は自暴自棄になりました。人間不信にも陥っていました。4つ年下の彼女に会ったのはそんな時期でした。


病院を退院した彼は、リハビリセンターに入りました。彼女はそこで見習い看護婦をしていたのです。やけを起こしてあれている彼を、彼女は親身に慰め、叱り、励まし続けました。その時の彼にとって、彼女の存在は唯一の救いだったのです。彼は恋に落ちました。彼女に告白した彼は、彼女もまた自分に好意を持ってくれていることを知りました。お互いの気持ちを確かめた二人は交際を続け、彼女は彼のプロポーズの言葉を待っていました。
しかし・・・・・・・・・
<続く>

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