これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。
そこで、やむなく私たちは、彼が一度だけ見たこと があるという彼女の制服姿 のかすかな記憶から、それがどの高校かを割り出す作業にかかったのです。
二週間後、私たちはついに彼女の高校を見つけることができました。高校から実家が分かり、 実家に向かいました。
しかし、彼女はすでに二年前に結婚していました。
彼女のお母さんは「相手 は離婚歴のある人で、私たちは反対だったのですが ……」と話してくれたのでした。
「再会できれば、今度は年の差なんて気にせず、真剣に付き合っていきたい」という依頼人の思いにこたえて、私たちは彼女を探し当てたのでした。でも、彼女はすでに結婚していました。
彼女の嫁ぎ先名を記した報告書を見た依頼人は、「ああ!」と大きく叫んだのです。
何事かと思ってみている私たちに、彼は本当にびっくりしたように言葉を詰まらせながら、「これ、マスターです! 彼女の結婚相手はマスターです!」と言ったのでした。
「マスター」としか聞いていなかったので、気がつかなかっ たことでしたが・・・。
そのあと、彼は事務所を出るまで「クソッ!人にはクギを刺しておきやがって」「あいつの方がおれよりも年上なのに!」とひとしきりでした。
そうです!本当に残念なことでしたが、あの四年前、自分で探したり興信所に依頼したあの時に彼女を探し当てていたなら、彼女はまだマスターと結婚していなかったのです。
<終>
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