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本気で愛した人が実は・・・(2) | 秘密のあっ子ちゃん(54)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 彼女(41才)の話によると、二人が別れた後、彼(45才)の所属する組は解散して、彼は九州の方へ行ったということでした。 「風の噂で、そんなことを聞きました。その頃に彼は結婚したようです」
 彼女はそう言いました。ですから、彼女が知っている、当時住んでいた住所とか組の名前とかは調査の上では全く役に立ちません。現在の彼を探す手がかりは、彼の名前と九州方面にいるだろうということだけなのです。しかも、九州に行って別の組に所属したものなのか、堅気になっているのかも定かではありませんでした。
 「うーん。これだけでは調べるには少し材料不足ですねぇ。他に何か覚えておられることはございませんか?」私が聞きます。
 「そうですねぇ…。他にというと…、そうそう、弟さんが京都で喫茶店をしているということは聞いたことがあります」
 「それは重要な手がかりです。その弟さんの喫茶店の名前は分りますか?」
 「今すぐには分りませんけど…。じゃぁ、ちょっとうちの若い衆に調べさせますわ」
 「?!」
 彼女はまだ組関係の用語が抜け切れていないようです。
 1週間が経って、彼女( 41才)からの回答が入りました。
 「若い衆の調べで、弟さんの喫茶店の名前が分りました」
 どうやって割り出したものなのか、それは定かではありませんでしたが、彼(45才)の弟さんの喫茶店の名前と場所を彼女は知らせてきました。喫茶店のことを少しは記憶に残っていたのかもしれません。
相変わらず、彼女は自分のデザイナー・オフィスのスタッフのことを「若い衆」と呼んではいましたが‥。 私達は連絡を受けたその足で京都へ向いました。
 しかし、弟さんはなかなか彼の居所を教えてくれません。
 「兄は今はもう堅気になって、真面目に暮らしています。子供も二人できて、普通に暮らしているんです。お見受けするに、お宅達がその関係とは思いませんけど、兄にもいろいろあったんで、どこのどなたか分からない方に僕が勝手にお教えする訳にはいきません」 私達は次の言葉に詰まってしまいました。というのも、彼女から「本人のみなら、自分の名前を出しても構わない」という条件を依頼時に聞いていたからです。
 私達は彼(45才)の弟さんに彼女(41才)の名前を出していいかどうかを確認しに戻らざるを得ませんでした。
 「弟さんにねぇ…。私の名前を出して、彼に迷惑がかからなければ構わないんですけど…」
それが彼女の返答でした。私達は再び弟さんに連絡をつけ、今回彼を探しているのは彼女であることを明らかにしました。
 「ああ、彼女のことならよく覚えています」
 「実は、お会いになってどうこうしたいということではなく、彼も以前にいろいろおありになられたようですので、今どうされているのかをご心配されているんです」
 「そういうことでしたら、お教えさせていただけます」弟さんはそう言って、彼の現在の住所や電話番号、それに近況まで詳しく教えてくれたのでした。
 彼は今、九州で、ある小さな会社の専務として迎えられ、そこで懸命に仕事に励んでいるということでした。そして、その社長の紹介で結婚し、二人の子供にも恵まれ、幸せに暮らしているということでした。
 彼女は報告書を受け取って、未だに彼には連絡を入れていないようです。ひょっとしたら、一生涯、連絡は取らずに遠くから見守っているだけになるかもしれません。

<終>

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