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空き巣に狙われている!?(2) | 秘密のあっ子ちゃん(125)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 「で、そのTさんは何とおっしゃいました?」
 私はさらに彼女(24歳)に尋ねました。
 「『僕じゃない』って。第一、私はその人と初対面でしたもの。その人も『僕の名前を騙(かた)って、けしからんヤツだ』って言ってました。それで、何か困ったことがあったらいつでも連絡しておいでって、携帯の電話番号を教えてくれたんです」
 「腑に落ちない話ですねぇ」
「でしょう?変な話だと思いません?」
 彼女は何度も「変な話だ」と言いました。
 「その税理士さんはあなたの目の前でTさんに連絡を取られたんですか?」 「いえ、後で連絡を取っておくと言われたんで、私の電話番号を言っておいたんです。そしたら、Tさんの方から電話が入ってきて、『会おう』と言わはったんです」
 「ふーん。どうもクサイですねぇ。その“T”と名乗って来られた人が本当に“T”という名前なのかどうかも分かりませんしね」 「そうなんです。一番おかしいと思うのは、最初に税理事務所に電話した時には、私が名刺をもらった“Y”が電話に出たんですから」
 彼女は口ととがらせて、そう言いました。
 彼女の飛び飛びの話からも、ようやくこれまでの状況を把握することはできました。しかし、彼女が一体当社に何をしてほしいと思ってやってきたのかは、話の流れからでは全く分かりませんでした。 「で、ご依頼の内容とは何でしょうか?」
 私は聞きました。ところが逆に、「どうしたらいいんでしょうか?」と、質問をされてしまいました。
 「それはあなたがどうされたいのかによります。その税理士さんと“Tさん”という人がおかしいということでしたら、“Tさん”が本当にTという人物なのか確認する必要があるでしょうし、二度と空き巣に入られるのが嫌だからということでしたら、防犯面を考えないとダメですし、盗聴が気になるということでしたら、盗聴の有無を確認すべきでしょう」 私は細かく説明しました。 
 「うーん……。全部です」彼女はそう答えました。
 私は“T”の人物確認と盗聴の有無の確認は当社でできるが、防犯面は警備会社かセキリティ専門の所に依頼された方がいいと答えました。すると、彼女はこう言ったのです。
「ボディガードのようなことはやってもらえないのでしょうか? 」
 たっての望みとあればしない訳ではありませんが、ボディガードというのは元来セキュリティ専門の会社の仕事であって、調査会社の仕事ではありません。しかも、料金がかなり高額になるため、治安のよい日本では少ない仕事なのです。 その辺りのことを説明すると、彼女自身、今ほとんど予算がないと言っていたにもかかわらず、少し不満そうでした。彼女は映画の影響なのか、現実と少し違うイメージを描いていたようです。私は「ウチにはケビン・コスナーみたいな“ボディーガード”はいませんよ」と言いたくなるのを押さえるのに苦労したものです。 
 「ボディーガードをつけたい」、「防犯カメラも設置したい」、「盗聴の有無の確認もしたい」、「“T”なる人物が何者かを調べたい」と、いろいろ希望のある彼女でしたが、何しろほとんど予算のない中で、今後の方策を考えなければなりません。
 で、結局、私の知り合いのセキュリティ会社に防犯カメラの見積もりを取り、盗聴の有無の確認と“T”なる人物の確認の内、一番料金の安いものを選ぶということになりました。
 私はすぐに防犯カメラの見積もりを請求しました。その見積もりがまだ来ないうちに、彼女から電話が入りました。
 「考えたんですけど、やっぱり私が会った“T”という人が本当に“T”なのか、すぐに調べてもらえません? 」
 彼女の口調は随分急いでいるようで、私達は早速“T”なる人物の確認作業に入りました。
 二日後、その調査も半ばにさしかかった頃、再び彼女から電話が入りました。 「どうしても気持ち悪いんで、やっぱり盗聴されているかどうかも至急に調べてほしいんです」
 「それでは」ということで、盗聴の有無の確認に出向く日時を「週末にも」と決めたのです。
 彼女の自宅へ出向くという前日、請求していた防犯カメラの見積もりがやっと届きました。
 その金額をを彼女に連絡しようとした矢先、三たび彼女から電話が入りました。 その話を聞いた時、私は目が点になりそうになったのです。
 「“T”なる人物が本当にTであるかを確認してほしい」、「盗聴の有無も確認してほしい」と矢継早に依頼してくる彼女の要望に添って作業を進めていた私は、三度目の彼女の電話では目が点になりそうになりました。
 「ちょうど今、ご連絡しようと思っていたところなんです。防犯カメラの見積もりが上がってきました。“T”の確認については順次進めています」。電話口に出た私は、早速こう言いました。
 「そうですか…」。彼女は浮かない返答でした。「明日、盗聴の確認でウチへ来てもらうことになってますよね? それ、ちょっと中止してもらいたいんですけど」
 「それは構いませんが、何か新たな事態が起こったのですか?」
 「ええ、それが全財産を盗られたんです」
 彼女の返答に、私は驚きました。
 「また空巣に入られたんですか?」
 「いえ、今回はそうじゃなくて、友達が、台湾の友達を居候させていると言ってたでしょ、その子に全財産を預けていたんですけど、彼女が引ったくりに会ったんです」
 「今、ウチに居候させている台湾の友達に、私、全財産を預けていたんですけれど、その子が引ったくりに会って盗まれてしまったんです」
 彼女の身の上には次々と災難が起こるので、私は驚いてしまいました。それにも増して、何故全財産をその台湾の“友人”に預けていたのかが不思議でした。
 「部屋に置いていたら、また空巣に入られると思い、預けていたんです」
 私の疑問に彼女はそう答えました。
 「で、引ったくりって、どんな状況だったんですか?」
 「彼女の言うには、デパートでやられたって。すぐに届けたら、トイレから彼女のバックとパスポートだけは出てきたらしいんですけど…」
 「バックとパスポートは出てきたんですか? 現金の他に彼女に預けていたものはありますか? 」
 「あと、カードとか…。それも全部盗られたんです」 「それって、ちょっと変ですよ。彼女のパスポートは盗られてないんですよね?」
 「それって、ちょっと変ですよ」。私は彼女の話を聞いて、ある一つの確信を持ちました。
 「そのお友達の人柄やあなたとの親密度がどれくらいなのか分かりませんので、一概に断定することはできませんが、彼女を疑ってみる必要はあるんじゃないですか? 彼女の狂言だという可能性は十分考えられますよ。彼女のパスポートだけが出てきているのも変です。外国から来ている人はパスポートだけは絶対に手放しませんしね。それに、これまでの空巣の件も、合鍵を持っている彼女だと考えれば、警察の言うように外から侵入した形跡がなくてもやすやすと盗めれるでしょう」
 「そうですねぇ…、そうですよね。そう言えば、3回目の空巣に入られた時、試しに私、店に出る前にわざと10万円をバラ散いておいたんです。そしたら、帰ってきたらきれいになかったですから…」
 彼女も心当たりがあり、友人が怪しいと思ったようです。しかし、確たる証拠がある訳でもなく、“友人”でもあるので、訴えるかどうかは逡巡していました。 「どちらにしても、もう私の部屋からは出ていってもらいます」彼女は言いました。
 こうして、彼女の「不思議な体験」は一応の“決着”をみたのでした。

<終>

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