このページの先頭です

彼に届けてほしいもの(1)| 秘密のあっ子ちゃん(173)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

ある日、当社に東京から見覚えのない女性名で小包が届きました。
その小包には美しく包装された品物が入っており、一通の手紙が添えられていました。
『貴社にご依頼するのに、お電話するかまたは来社するのが筋なのですが、私は東京在住の上にコンピューターのプログラミングを扱っておりますので、お電話することもままならず、お手紙を書いた次第です。実は、この品物を彼に渡していただきたいのです』
手紙はこんな書き出しで始まっていました。
それによると、彼は大阪の病院に勤務している技師で、彼女は彼と二、三年前まで交際していたらしいのです。どういう理由で別れたかは手紙の内容からは定かではありませんでしたが、別れた後も、彼女が出張で大阪へやって来た時、新大阪駅で偶然出会ったり、あるいは今年の二月ごろ彼が電話をくれていることが留守電のメッセージに入っていたりしていました。しかし、彼女は家を空けていることが多く、そのまま連絡が途切れてしまったと言います。
彼女が当社に依頼してきた動機とは、彼とよりを戻したいということではありませんでした。

<続>

Please leave a comment.

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。