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姪御さんの依頼?(2) |秘密のあっ子ちゃん(46)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 「できたら、一度お話しできる機会を持ちたいんですが…」
 「姪御さんとですか?」私は尋ねました。そもそも、彼女は、「姪がそのパイロットの親切に大感激しているもので、改めてお礼が言いたい」というのが調査する目的だと言っていたのですから。
 「いえ…。姪ではなく、私と会えるように、先方にお話ししていただけませんでしょうか?」
 「やっぱりな」と私は思ったものです。長年、この仕事をしていれば、誰かの代理で依頼しているのか、自分が探していて名乗るのが恥ずかしくて、誰かの代理を装って依頼してきているのかは、話を聞けばすぐに分ります。マ、インテリ系の人に多い傾向です。しかし、そんなことは敢えて問い詰める必要もないので、大概は黙って聞いているのですが…。彼女の場合も照れがあったのでしょう。が、人に好意を持つことは別に恥ずかしいことではありません。
 話を聞いていると、依頼人(39才)はインテリであると同時にプライドも高く、それに石橋を叩いて渡るような性格で、
 「どんな風に先方に連絡を取るのですか?」とか、「私のことはどういう具合に伝えて下さるのですか?」とか、「先方がNOと言えば、どうなるのですか?」とかをこと細かく尋ねます。質問としては至極当然のことなので、スタッフはそれについて一つ一つ答えるのは当り前のことなのですが、何度も何度も念を押すように聞き返します。私は「彼女は異性に対して自分からアタックをしたこともなければ、ふられた経験もないんだろうな」と思いながら、スタッフが何回も同じ質問に答えているのを横で聞きながら思っていました。
 彼女は最後に、「絶対、先方に迷惑がかかるようなことはしないで下さいネ!」かなり威圧的にそう言って彼女は電話を切ったものです。「ハイ、ハイ、そんなこと言われなくても、百も承知」事務所にいたスタッフ全員がそう思ったのは当然です。何しろ、先方に迷惑がかかるようなことをすれば、彼女のみならず、当社の信用問題に関わることなのですから…。
 マ、そんなこんなで、私達は、例のパイロットに対して、コンタクトの代行をすることになったのでした。 依頼人(39才)のお目当てのパイロットは、勤務が忙しく、なかなか連絡が取れませんでした。やむなく、私達は彼に当社へ連絡をくれるようにと、センターへ伝言しておきました。 翌日、すぐに彼から電話が入りました。スタッフが、「親子航空体験」のイベントでとても親切にしてもらったことを感激して、もう一度是非連絡を取りたいと言っている人がいる旨の説明をしました。
 彼は照れながら、それに随分恐縮して、「どの方のことでしょう?」と尋ねてきました。
 スタッフが、写真を一緒に撮ってもらった人だと告げると、「ああ、あの方達ねぇ…」と言ったのです。彼は彼女のことを覚えていました。そして、最後に、「乗務便は前日にならないと分らないことも多く、センターにもなかなかおりませんので、こちらの方からお電話させていただきます」と言ってくれたのでした。 スタッフは彼からの電話を切ると、すぐにその足で(“その手で”と言った方が正確ですが)彼女に連絡を入れ、今しがたの電話の内容を伝えました。
 彼女は今度は、くどくどと尋ねることもなく、威圧的でもなく、「有難うございました」を連発していたと、スタッフは私に報告したのでした。

<終>

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