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ナンパで知り合った二人(1)| 秘密のあっ子ちゃん(158)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

まだ夏のきつい日射しが さし込む九月の初め、当社 に飛び込んできた依頼人は 二十歳になる男性でした。 少しシャイそうなうな礼儀正し い年でした。 彼は、ひと月前から連絡 が取れない彼女(19歳)を 探してほしいとやってきたのです。 彼と彼女が知り合ったの は、一年半前の春のことで した。  その日、道頓堀の「ナンパ橋」で、彼は仲間三人と一緒に退屈しのぎに時間していたのだそうです。 仲間のうち二人は、橋を通る女の子に誰かれなしに声をかけています。 彼女、は友人が声をかけた何人目かのグループの中にいたのです。
ストレートのロングヘアーに色白で、純日本的な顔 立ちの少しおとなしそうな 彼女に対して、彼は初め何とも思わなかったそうで す。 友人達が他の二人の女 の子と話し込んでいるの で、何となく彼が彼女と話 すようになっただけだと言います。
それでも、彼は彼女と橋 の上で十五分ほど立ち話をし、自分のポケベルの番号 を教えました。 彼が彼女のことをすっかり忘れてしま った一ヶ月 後、突然彼女からポケベル に連絡が入りました。
首をかしげながら彼が電話を入れると、そこは彼女のアパートでした。すぐには彼女のことを思い出せなかった彼でしたが、話しているうちにあの時の彼女だということが分かりました。
彼女は篠山の出身で、 この春地元の高校を卒業し、 今は専門学校に通うために一人暮らしをしていると言います。
話が弾んで、彼らは翌日にデートする約束をしたのでした。
再会した日、二人は食事しながら、学校や仕事の話 で大いに盛り上がりました。おとなしそうに見える彼女も、話してみるとなかなかおもしろい子だと彼は感じました。話し込むにつれて、純日本的な彼女の顔立ちの中にいきいきとした表情が現れてきます。彼は、このとき初めて彼女を意識したと言います。
それから二人は、三四 回デートを重ねました。 二カ月もたたないうちに彼は彼女の一人暮らしの アパートへ、実家から自分の荷物を運びこんでいました。

<続>