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韓国からの依頼は・・・(3)| 秘密のあっ子ちゃん(166)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

翌日、ビデオを見にきた依頼人も『十分証拠にな る』と大喜びでした。
しかし、実を言えば、当 日の夜、私は怒っていました。わが尾行班は、任務が済むと、その韓国クラブで本当に客にな ってしまい、私が待てど暮 らせど全く連絡を入れてこ なかったのです。若い彼ら のこと故、「仕事も済んだ ことだし、初めての韓国クラブで羽を伸ばそう」と考えたことは容易に想像に想像がつ きましたが、 「電話一本く らい入れろ!」と、私は一人で叫んでいたのです。

それにもう一つ、私には気に食わないことがありま した。というのは、当の証 拠ビデオは『仲間同士でビデオを撮り合っている』格好で写したため、わが尾行 班の顔が写りすぎているのです。
翌日、私は依頼人に『これでは使えない』と断り、 その夜、別班を派遣しまし た。もちろん、今度は『あ まりハメをはずすなよ』と 釘をさすのを忘れなかった のは言うまでもありませ ん。

その日は、私ともう一人女 性スタッフがビルの下で待 機し、彼女が尾行班を送って出てきた際に写真を撮る手はずになっていました。

私達は”お上りさん”よ ろしく、『大阪の夜はネオ ンがすごいねエ・・・』などと言いながら写真を撮りまくります。一階の中華料理 店のマスターとも仲よくなり、一緒に記念撮影し ている時に、『今から降ります』と尾行班から携帯に連絡が入ります。私はマスターをそのまま立たせ、カメラを構えます。絶 妙のタイミングで今回もば っちり彼女の”仕事ぶり”を撮影できたのでした。 依頼人は現像できた写真を大喜びで受け取り、慌ただしく韓国へ帰国していきました。

後に親友の言によると、 依頼人が私に語ったことは 真実だったようです。依頼人の妻はできるだけ夫から金をひき出すために離婚に合意しなかったそうです。『話が一方的すぎるのでは?』と いう私の心配は”懸念”に終わり、一年後、依頼人はもはや多額の慰謝料 を要求されることもなく、 晴れて”悪妻”と離婚できたとか・・・。

<終>