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「マディソン郡の橋」のように(3)| 秘密のあっ子ちゃん(163)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

彼の所在が判明し、再会 を約束した日、電車がホームに着いて、改札に向って歩いていた彼女を彼は肩を叩いて呼び止 めました。
彼は振り返 った彼女を見てびっくりしました。
『えらいゲッソリやせて しもて・・・』
『いろいろあってネ・・・』
後は言葉になりませんでした。

二人で入った鍋屋で、彼 は『カニが好きやったな』と彼女の好物を注文しました。

十五年のブランクが一 気に消えるようでした。ま るで昨日別れたばかりのように彼は彼女の好物ばかり注文していました。

食事のあと行ったスナックで、彼女はずっと考えていたことを口にしました。
『一生に一回のお願いが あるの・・・銀座の恋の物 語をデュエットしてほし いんやけど・・・』

“銀恋”の最初で最後の デュエットをした後、彼は 彼女のために『おまえに』 を歌ってくれました。

彼女は彼と今も年に何回か会っていま す。

彼女は彼との再会の後、随分元気にな りました。体重もほとんど 取り戻し、今、文字通り『彼に助けてもらった』と 心から感謝しているのです。

<終>

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