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韓国からの依頼は・・・(1)| 秘密のあっ子ちゃん(164)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

中学、高校を通じての私の親友で、今、岡山で芸術料理の料亭の女将をし ている女性がいます。彼女のお父さんは腕のいい料理 人で、お母さんが女将、そして彼女のご主人はお父さ んの弟子だった人で、彼女 達夫婦はホテル内の支店を 任されているという訳で す。
彼女はもともと多才な人で、また、音大出身の経歴 を生かした音楽関係のつな がりや、別に運営している『うつわサロン』関係の陶 芸家達、あるいは店に出入りされる著名な常連さんな 「ど幅広い交友があります。 彼女はその幅広い人脈を 生かして、従業員達が仕事 の合間に習えるようにと、 様々なサークルを作っています。とりわけ語学サークルは英語、中国語、韓国 語、イタリア語などがあ り、講師はそれぞれの国の 彼女の友人達が担当しているという、何とも羨ましい 限りの職場なのです。
ある日、彼女から私の事務所に電話が入りました。
『あっちゃんも知っているウチの韓国語の先生が、 友達のことで相談したいことがあると言ってんねんけ ど、聞いたってくれる?』 彼女が言う韓国語の先生 というのは、ソウル出身で 三十歳。現在、岡山で大学の講師をしており、私が岡山へ遊びに行った時に一度 会ったことのある人でした。

電話が入った翌日、その先生は親友の料亭の支配 人と共に、二日前に来日した故郷ソウルの友人を 連れて当社にやってきました。
先生の友人という人も ソウルの大学で教鞭を取っており、年齢は三十二 才、今回の依頼人はこの 人だったのです。
先生の通訳を介して、 私が依頼人から聞いた話 はこうでした。

彼には妻と子供二人が います。彼の妻はほとん ど家事もせず、子供の面 倒もろくに見ないと言い ます。愛想をつかせた彼 は、彼女に離婚を申し入 れましたが、彼女はそれ に同意せず、何年も夫婦喧嘩が絶えなかったそうです。ある日、たまりか ねた彼は、思わず彼女に 暴力をふるってしまいま した。彼女はそれに対して慰謝料を要求し、その 金で釜山にスナックを開 きました。当然別居とな った訳ですが、彼女はそれでも離婚に同意しません。釜山のスナックはす ぐに潰れ、彼女は日本に 出かせぎに出始めたとい うことでした。

私は、日本にいる彼の妻を探してほしいという 依頼なのかと話を聞いて いました。しかし、依頼 内容は全く違ったので す。

<続く>

 

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