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駆け落ち先でお世話になった方を・・・(1)| 秘密のあっ子ちゃん(169)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

ある日、五十才過ぎの上品な話し方の女性から、問い合わせが入りました。
『初恋の人でなくても、 探してもらえるんでしょう か?』
『探される目的にもよりますが、心に残っている思い出の人なら、初恋の人でなくてもお探しさせていただいていますが』と私。
「実は、昔お世話になった同性の方なんですが・・・」
彼女の話はこうでした。 三十五年程前、彼女は愛した人がいました。彼女が 十九才、彼が二十才の時の ことです。
二人は固く結婚の約束をしていましたが、彼女の両親に強く反対されたのでした。若すぎるということと、彼がまだ大学生だったからです。
彼の両親の方も、当然その時点での結婚を反対しま したが、彼の粘りで『卒業して就職し、一人前になったら』という条件で許しを 得ることができました。 彼が卒業するまでの間、 二人は待ちました。

二年後、無事彼の就職も決まったある日、彼は結婚の許しを得に、もう一度彼 女の両親を訪問しました。 しかし、答えは『ノー』 でした。理由はと言えば、 『就職が決まったと言 っても、まだ一人前では ない。結婚はまだまだ早い!』と彼女の父親。
『では、いつになれば 許してもらえるんですか ?』と彼。
『そんなもん、分らん』
『それでは待ちようがありません。まだ早 いということの他に反 対される理由があるんで すか?』
『・・・。』

それからも二人は、粘り強く彼女の両親の説得に努めましたが、半年たっても一年たっても一向に埒があきません。
一年が過ぎた春のある 日、二人はついに家を出 ました。駆け落ちをしたのでした。

彼女の両親は彼の親に 怒鳴り込むやら、血眼に なって二人を探すやら、 それは大騒ぎだったそう です。
しかし、二人は彼らのことを誰も知る人のいな い九州に身を潜めたのでした。

<続>

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