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病弱だった彼女(1) | 秘密のあっ子ちゃん(57)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 「ご無沙汰しています。そちらの皆さんはお元気ですか?僕のこと、覚えてくれてはりますか?」
 年の暮も押し詰まったある日、そう電話してきたのは以前に一度当社に依頼されてきた男性でした。 彼は三十才そこそこの若き医師です。その時の依頼というのは、ある場所で偶然知り合った、いわゆる一目惚れの人の連絡場所を知りたいというものでした。 先方の所在が判明した時、彼はコンタクトは自分自身で取ってみると言いました。「それにこしたことはありません」と、私は報告書を手渡し、その後の二人がどうなったのかは知りませんでした。
 「まぁ、お久しぶりです。よく覚えておりますよ。その後、彼女とは連絡は取れましたか?」
 「やぁ、あの件は連絡を取ったことは取ったんですが、もう既に決まった人がいるとかで、あっさりふられてしまいましたんですわ。マ、先方も『そう言って下さるのは有難いことだけど』と、丁寧に応対はしてくれたんですけどね…。僕としても、そう言われるとそれ以上しつこくするのもなんだと思って諦めました」
 彼は結構あっけらかんとしていました。もともと明るい性格の人のようです。
 彼は、前回の一目惚れの人へ想いが叶わなかったことについて、結構さばさばと語っていました。
 「マ、人生、そんなに全部うまくいく訳がありませんからね。すっぱり諦めました」
 「そうですか。それは残念でしたねぇ…」
 「実は、今日電話させてもろたんはその件のことではなくて、高校の時の同級生のことで、ちょっと相談にのってもらいたかったんです…」
高校二年と三年の時に一緒だった女性のことが最近気になってしかたがないというのが、今回の用件でした。
 「たまたまアルバムを整理してたら、当時の写真が出てきましてね、もともと少し病弱だったんで、元気に暮らしているか、気になりまして…。え?初恋?初恋と言えば初恋になるんでしょうかねぇ。でも、結婚したということは聞いてますし、高校時代は病気の事で彼女は大変でしたから、元気でいてくれればいいんですけど…」
彼の話によると、二人は昔からの幼なじみのように随分仲が良かったようです。病弱な彼女が授業を欠席すると、彼がノートを貸してあげたり、体調がひどく悪い時は送ってあげたりする仲だったと言います。

<続>

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