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思いもよらない悲報が…(3)| 秘密のあっ子ちゃん(156)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

泉州の紡績工場の同僚だ った彼女が九州の実家へ帰 って九年。依頼人が訪ねたときは、彼女の家は立ち退 きになっていて、すでにどこかに引っ越していまし た。
近所の人に「どこへ越し たかは聞いてませんネ・・・」 と知らされたとき、『仕方がない』とあきらめていた 彼ですが、ふとしたときに 彼女のことを思いだすのだ そうです。
それが二度、三度と重な るうちにどうしても気に掛 かって仕方なくなったと言います。 彼は彼女に対して淡い恋 心を抱いてはいたのでしょうが、それにも増して無我 夢中で働いた青春時代の懐 かしい思い出として彼女の 存在があったようです。
「おそらく結婚して子供 の一人や二人は いるでしょう が、どんな暮ら しをしているか 気になります。 もし消息が分か ったら、できたら 会って話が したいのです」 彼の依頼の動 機はこういうことでした。 私たちはこの依頼を引き受け ました。
しか し、手掛かりと 材料 が少ない。 泉州の紡績工 場、彼女が通っていた夜間高校、そして九州の実家があった住所、分かっていることといえばこれくらいしかなかったのです。

<続>

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