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日本へ出稼ぎに来た彼女(2) | 秘密のあっ子ちゃん(72)

これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 「元気でがんばっているんだろう」と思ってはみても、彼女(34才)のことがどうも気になってしかたなくなった依頼人(70才)は、病院中に聞き回り始めました。
 ところが、医師や看護婦さん達はいくら彼がその真意を説明しても、「プライバシーの問題があるので」と、派遣会社の名すら教えてくれませんでした。
 そうこうしているうちに、彼は同じ入院患者から一つの情報を得ることができました。「彼女と同じく南米から出稼ぎに来ていた親子のヘルパーなら知っているかもしれない」と。しかし、その親子のヘルパーも既に病院をやめていました。 まだまだ下半身が不自由な身では探しきれないと判断した彼は、当社に依頼してきたという訳です。 
 スタッフは病院関係はもちろんのこと、ヘルパー仲間にも聞き込みに回りました。 
病院では彼への応対と同様に調査拒否で、彼女が所属していた派遣会社を教えてもらうことはできませんでした。しかし、ヘルパーで来ていたおばさんからの話で一つの手がかりを得ることができたのです。 
 ヘルパーのおばさんから得た情報はこうでした。
 「南米から出稼ぎに来ている日系人をヘルパーとして派遣しているのなら、たぶんあそこの会社じゃないな?」
 スタッフはすぐにその派遣会社へ出向きました。
 彼女はやはりその派遣会社に所属していました。そこで彼女の本名が分かりました。彼女は依頼人には日本名を名乗っていたのです。派遣会社にはその本名と日本名が登録されていました。そして同時に、彼女の出身地も分かりました。ブラジルのサンパウロ市です。しかし、それ以上は記載されていず、詳しい連絡先は分かりませんでした。会社側の話によると、彼女は三ケ月程前に帰国してしまったということでした。
 例の親子のヘルパーさんにも聞いてみました。しかし、彼女は病院内と同様、会社内でも無口で、自分自身のことはほとんど語らなかったと言います。
 「大変おとなしい人で、口数も少なく、『帰国する』と電話があったきりで、サンパウロの連絡先も聞いていないんですよ」彼女達はそう話してくれました。
 これで、日本国内での調査の糸口は断たれてしまいました。サンパウロへ飛び、日本人社会へ聞き込めば彼女の居所は判明するのでしょうが、依頼人は今、そこまで探すべきものかどうか、それを思案中なのです。

<終>

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