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名前の分からない彼女(2)| 秘密のあっ子ちゃん(147)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

「見つかるでしょうか?」と彼は聞く。

しかし、探偵社としてはこの質問が一番困ります。

依頼者としてはそれが一番の関心事だということは、私としてもじゅうじゅう承知なのですが、調査というのはやってみないと分からない。

材料が少ないから調査が判明しないということでもなく、逆に多いからといって絶対に見つかるとも限らないのです。それこそケースバイケースなのであって、調査に入る前の予測などまるで無意味です。最善の方策は、「判明に向けてあらゆる努力をする」ということしかありません。

ともあれ、私たちは「せめてもう一度だけでも会いたい」という彼の気持ちを受けて、東北新幹線で出会った彼女を捜すことになりました。しかし、あまりにも手掛かりが少ない。そもそも、依頼人は彼女の名前すら聞いていないのです。名前が分かっていないということは、調査するにはかなり厳しい事態です。

分かっていることと言えば、彼女は高校を卒業したばかりで、サッカー部のマネージャーをしていた。そして、仙台駅から乗車してきたということだけ。

そこで私たちは真っ先に宮城県下の高校をピックアップしていきました。すると公立・私立合わせて四十八市町に百十八校もの高校があったのです。

その百十八校すべてに対して、サッカー部があるか否か、昨年度のマネージャーは女生徒だったかどうかをしらみつぶしに当たっていきました。

こうして、彼女の高校をかなり絞り込めていけたのですが、ここでまた障害が立ち塞がってきました。

例のごとく『プライバシー保護のため』という理由でなかなか、その女子マネジャーの連絡先を教えてくれないのです。何度も学校に足を運び頼み込んだ訳ですが、学校側が「どうしても教えられない」という人については、やむなく先方の方から当社に連絡を入れてもらうようにしました。しかし、これは”賭け”と言えるもので、学校側がちゃんと相手先に打診してくれたとしても、先方の方で『なんのこっちゃ。なんで私から連絡せなあかんねん』(と大阪弁では言うわけはありませんが…)とつむじを曲げられては、この調査はおしまいです。

三日経ち、一週間が経ちました。それまでに調べることのできた女子マネージャーの中には、該当者はいない旨の確認は既にとれていました。 望みは連絡待ちのあと三人だけです。

八日目の朝、電話が入ってきました。それは頼み込んでおいた学校の先生でした。

「本人に連絡をとりましたところ、お宅がおっしゃっている日には東京には行ってないということです。人違いだと思いますよ」

「そうですか。わざわざご丁寧にありがとうございました」

残るは二人です。

『何としても連絡を入れてほしい!』そう願わずにはいられませんでした。

そして、ついに十日目の夕方、二人のうち一人から電話がありました。

「わざわざ電話までしていただいて、つかぬことをお伺いして申し訳ないのですが、今年三月六日の土曜日の午後四時ごろ、新幹線に乗られませんでしたでしょ

うか?」と私が聞く。

「えッ?」と彼女。

「何かその日は、就職後に下宿する東京の親類の家へ行かれるとかで…」

「あーあーっ、思い出しました。乗りました!」

思わず『やった!』と叫びそうになりました。

 

連絡待ちのサッカー部女子マネージャー二人のうち、一人からやっと電話が入りました。ついに彼女こそが依頼人の探している東北新幹線車内での「一目惚れの人」だということが判明したのです。

「あぁ、思い出しました。その日、新幹線には乗りましたが、それが何か?」と不審がる彼女。

そりゃあ、いぶかるのは当然のことです。

「実はあの時、あなたの隣に座っていて、仙台から上野まで話をされた男の人を覚えていますか?

「ええ、覚えています」

こうなると話はうんとしやすくなります。

私が彼女と別れてからの彼の気持ちやこれまでの経過を説明すると、最初は少し照れていた彼女も、彼に対してまんざらでもない様子で、一度会うことをOKしてくれたのでした。

約束のデートの日、彼がめかしこんで出掛けて行ったかどうかは知りません。はたまた、その後二人が交際を始めたのかどうかも、彼からの連絡がは入っていない今、知る由もありません。

ですが、あの電話の感触では何とかうまくやっているんじゃないかなぁ、と思っています。

<終>

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